映画『十一人の賊軍』のコラボビール十一本を飲む(其の三)
ヘイジーIPAとはニューイングランドIPAといわれる種類のIPAを指す。米国東海岸のニューイングランド地方(北から順にメーン州、ニューハンプシャー州、バーモント州、マサチューセッツ州、ロードアイランド州、コネティカット州の6州)で最初に造られた、濁りのあるフルーティーな香りのIPAのことで、見た目が濁っていることから「かすんだ、もやのかかった」という意味の「HAZY(ヘイジー)」と呼ばれている。
これまでオレンジ色や黄色のヘイジーIPAしか飲んだことがなかったので、褐色がかった見た目にびっくりした。「ビール女子」というサイトでも、ヘイジーIPAを<濁っていて、オレンジ色や黄色の見た目が特徴のビール>と説明しており、褐色に濁ったヘイジーIPAはすごく珍しい。珍しいどころか初めてお目にかかった。
ヘイジーIPAの特徴として香りの高さも挙げることができるが、この「引導のヘイジーIPA」は甘い香りは若干するが少なめ。口に含むと、すぐに感じたのはバナナのような香りと味だった。甘さにヘイジーらしさをほのかに感じるが、ドライ系ヘイジーと言われればそうとも言えるかも。苦みも少なめ(これは従来のヘイジーらしい)。
実はこれを飲んだ後、東京競馬場でベクターブルーイングのヘイジーIPA「JRA70周年記念限定ビール~秋~」を飲んだら、同じように褐色がかっていた。ベクターのブルワー、三木さんに聞くと「カラメル(焙煎)麦芽をあえて加えてブラウンの色味を出しました」と言うではないか。今は黄色やオレンジ色が主流だが、米国から入ってきた頃のヘイジーIPAをイメージしたのだという。そうなんだ。輸入された当初のヘイジーIPAは飲んだことがなかったので知らなかった。「引導のヘイジーIPA」もブラウンがかっていたと三木さんに話すと「意図があってその色を出しているはずですよ」。
映画の「引導」は、千原せいじ演じる色好みな僧侶。試写会でもらったパンフレットには<坊主でありながら檀家の娘を手籠めにするなど、数多くの女犯により死罪を言い渡される>とある。僧侶はこの世からあの世に引導を渡すのが僧侶。個人的には、この世とあの世の間には霞(かすみ)がかかっているイメージがあるのでヘイジーIPAにしたのだろうか。そういえば、ヘイジーにしては珍しいブラウンがかったこの色、映画で引導が着ていた僧服に似た色だったような気がする。