なぜアメリカの高校野球に“甲子園”は存在しないのか?
日本の夏の風物詩とも言える甲子園大会は花咲徳栄の初優勝で熱狂の14日間の幕を閉じた。 アメリカでも、この時期、高校野球のビッグイベントがいくつかあり、8月6日から10日まで、過去にクレイトン・カーショウ(ドジャース)、マイク・トラウト(エンゼルス)、ブライス・ハーパー(ナショナルズ)らが出場した「エリアコードゲームズ」がカリフォルニア州のロングビーチで開催され、13日には、かつてハーパー、クリス・ブライアント(カブス)、バスター・ポージー(ジャイアンツ)らが選抜された「パーフェクトゲーム/オールアメリカン・クラシック」が、同州サンディエゴにあるパドレスの本拠地ペトコパークで行われた。 今後も11月終わりまでパーフェクトゲームが主催し、選ばれた高校生だけが参加できる「ショーケース」と呼ばれるイベントが各地で続く。 日本の甲子園大会も、そうしたアメリカのイベントも、高校生がなんとしても出たい、という点では共通する。が、趣旨そのものはまるで異なる。 いや、甲子園大会にも、プロ入りに向けたアピールの場という一面もあるが、エリアコードゲームズにしてもショーケースにしても、大学の奨学金を得ること、大リーグからドラフトされることに特化したオーディションの場なのである。 トライアウトを受けるにも推薦が必要なエリアコードゲームズに招待される選手は全米でおよそ220人。オールアメリカン・クラシックはさらに狭き門で約50人。高校の中でも、トップ中のトップが集まるだけに、そこには大学のリクルーターや大リーグのスカウトがこぞって姿を見せる。奨学金やドラフトに直結するため、そのスカウトらの前でプレーすることこそ、選手らの目標といえる。 ただ、そこまで残るような高校生はすでに勝ち組。オールアメリカン・クラシックを主催する「パーフェクトゲーム」のデータによれば、過去15年で663人が参加し、そのうちドラフトされたのは561人に上り、1巡目で指名された選手は188人もいるそうだ。あとはトップの高校生らで、契約金がより高くなるドラフトの上位指名、名門大学の奨学金をめぐって争いが行われる。 もちろん、ボーダーラインにいる高校生は必死でアピールする必要がある。いずれにしても、そうして高校野球の目標というピラミッドの頂点に、大学やプロへの切符が君臨する点で、甲子園で優勝するという最大の目標がある日本とは大いに異なるといえよう。