「森」がお墓になる。あなたの命で木々が育つ、''循環葬''という新たな選択肢
私が「私」よりも大切にしたいもの
── 循環葬は現在、能勢妙見山のみの運用となっていますが、今後の拡大予定はあるのでしょうか? 今、東京を中心に関東からのお問い合わせを多くいただいていて、確かな需要を感じているところです。場所としては都心から2時間以内で行けるような森で、地元のお寺さんと連携してやっていきたいと考えています。 鎮守の森という言葉もあるように、お寺さんは大きな森を持っていることが多いです。ですが、大きな森を持っていればいるほど管理費もかかってくるので、宗教法人としての経営に苦心されているお寺さんは少なくありません。そこに循環葬という新しいビジネスを通じて森をつくっていく私たちの考え方を提案していきたいです。 日本は国土の7割が森林ですが、今は林業の衰退だったり、管理者の高齢化などでかなり多くの森が放置されています。そしてそれはこれからどんどん増えていくとも言われています。森の有効活用という観点で、私たちの事業がお役に立てることはあるはずです。 ただ、現状では法律の問題もあり、私たち民間でできることは限られています。私たちは日本中にある森を守っていきたいので、それが法律によって規制されている現状はロビー活動を通じて変えていきたいです。 ── 循環葬は、エンディングの選択肢を増やしたいという思いに、森の保全という観点が掛け合わされた独自性のあるリジェネラティブなビジネスだと思います。最後に小池さんにとっての「死」とは何かを聞かせてください。 私は、まわりの方々の記憶から私が消えたときが「死」だと思っています。私は墓標を残したいと思わないので、忘れ去られて消えるならそれでいい。むしろ、私が「私」よりも優先したいのは、残された人たちの気持ちや暮らし、そして美しい自然です。 それを考えると、私のなかで祖父母もデザイナーの先輩もまだ亡くなっていません。物理的な「死」は、かならずしもその人との永遠の別れじゃないと思うんです。 深い森のなかで自然を感じながら、笑顔で大切な人を送り出す体験はとても豊かなものです。それをぜひ多くの人と分かち合いたいなって思います。
取材:長谷川琢也 取材:徳谷柿次郎 取材・編集:友光だんご(Huuuu) 取材:根岸達朗