「森」がお墓になる。あなたの命で木々が育つ、''循環葬''という新たな選択肢
墓の「選択肢」が少ない国、日本
── 構想のきっかけはどのようなものだったのでしょうか? 私自身がお墓の改葬で、選択肢の少なさに直面したことです。 私はフリーランスのコピーライターとして15年活動していたのですが、コロナ禍で祖父母を亡くしました。そのときに、遠方にあった家のお墓を実家の近くに移そうということを家族で話し合って決めたのですが、自分たちが買いたいと思えるお墓がなかなか見つからなかったんです。 前向きに検討したのは樹木葬でしたが、実際に見に行くと、言葉のイメージとは裏腹に「カロート」と呼ばれる石室がずらっと並ぶ光景で、自然に環るという感じが全然しなかった。樹木葬を否定するわけではないのですが、そのときはあまりピンと来ませんでした。 祖父母を大切にしたい気持ちは変わらなかったので、そのときにそもそもお墓の姿ってそんなに大事なんだろうか、ということを思いました。近年は海に散骨する「海洋葬」などもありますが、もっとほかにもいろんな埋葬のかたちがあっていいし、しっくりくるものがないなら自分でつくるしかないとも考えて。 ── お墓の選択肢の少なさというのは、確かにそれを求める当事者になってみないと実感しにくいことかもしれませんね。 一方で海外に目を向けると、遺体をカプセルに入れて土に還す「コンポスト葬」や、火ではなく水で遺体を分解する「水葬(アクアメーション)」など、さまざまな葬送のかたちがあることも知りました。それらはDEATH TECHと呼ばれているのですが、死に関わる課題や不安をテクノロジーやアイディアで解決するスタートアップが海外では続々と登場しています。 少子高齢化や多死社会は日本に限らず多くの先進国の課題ですが、日本はその中でも課題が顕在化している「課題先進国」であるにも関わらずイノベーションに欠けている。そこに自分の経験や感性を生かしてみたいと思ったんです。 ── 日本はお墓だけではなくて、葬式も画一的なところがありますよね。 そうですね。私は以前、仕事の先輩のクリエイティブディレクターが亡くなられたときに、すごくすてきなお別れ会を経験しました。ご本人が生前から企画していたことでもあったのですが、その招待状には「いつも私と会うような格好で、何も持たずに来てください」と書いてありました。 おしゃれな仲間がたくさんやってきて、お葬式とは思えない楽しい会でした。それは、これまでの人生で経験したことのないようなものだったので、なんでこういうすてきなお葬式が日本には少ないんだろうって、疑問を持ちました。 日本ではお墓もお葬式も、あまりにもビジネス化されていて、それが民衆のもの、個のものになっていないんじゃないか。そういう個人的な思いが、この循環葬の構想にもつながっています。