日本の「公立小学校」を取材したドキュメンタリーが、教育大国フィンランドで絶賛されたのはなぜ? 映画監督に聞く
世界各国で大反響を呼んだドキュメンタリー映画「小学校~それは小さな社会~」。山崎エマ監督が世田谷区の公立小学校で1年間にわたって撮影し、日本の小学校教育を見つめなおした本作が、この冬、日本で凱旋上映されています。大阪の公立小からインターナショナルスクールを経てニューヨークの大学へと進学した山崎監督に、外から見ることで見えてきた日本の小学校教育の良さや映画に込めた思いを聞きました。 【写真】一部の都内公立小中学校の玄関から消えたものは… ■日本人の“ふつう”は小学校で育まれた ――日本の公立小学校を舞台にドキュメンタリー映画を撮ろうと思ったのはなぜですか。 大学を卒業後、アメリカで映像制作の仕事をし始めたときに、「責任感を持って仕事されますね」「時間通りに来ますね」「チームワークが得意ですね」など、自分としては“ふつう”に仕事をしているだけなのに褒められることが多かったんです。それってどうしてだろうと考えたときに、私が日本人だからなんじゃないかなという感覚がありました。それで自分自身の「日本人らしさ」を辿っていったら、日本の小学校に行きついたんです。 私は大阪の公立小学校を卒業後、中高はインター校に進学したので、日本の教育を受けたのは小学校の6年間だけ。この6年間で培われた価値観が自分の基礎になっていて、同時に自分の強さにもなっていたんだと気づきました。お寿司や侍、アニメもいいですけど、海外の人たちに日本のことを知ってもらうなら、小学校が大きな鍵になるんじゃないかと思って、いつか日本の公立小学校のドキュメンタリーを作りたいと思ったのが今から10年前のことです。 ――山崎監督が思っていた“ふつう”が、アメリカでは“ふつう”ではなかったんですね。 掃除や日直、給食の配膳、運動会や音楽会といった行事など、アメリカで日本の小学校の話をすると、大抵びっくりされます。例えば、掃除一つをとっても、「なんで掃除をするの?」と聞かれます。きれいにすることが目的なら大人がやったほうがきれいになるし、そもそも学校には良い教育を受けるために通っているのに、なんで掃除に時間を割かないといけないのかって。でも、学級活動や学校行事など子どもたちが主体となって取り組む、いわゆる「特別活動」と呼ばれる教科以外の学びは、子どもたちが関わることに対して自ら責任を持つことの練習だと思うんですよね。