7&i買収提案、日本も北米資本主義の土俵で闘う時代に-有識者
(ブルームバーグ): 敵対的買収の実務に詳しい三田証券オーナーの三田邦博氏(同証非常勤取締役)は、カナダ企業によるセブン&アイ・ホールディングス(HD)への買収提案について、日本企業が北米と同じ資本主義の「土俵で闘わなければならない」現状を示す一例だと指摘。経営者は身売りも含め合理的な判断を迫られると述べた。
三田氏はインタビューで、経済産業省や東京証券取引所が、買収提案の真摯(しんし)な検討や資本コスト・株価意識の経営を促す中、今回の買収提案は「起こるべくして起こっている」と分析する。北米企業はインフレ下で余剰資金の使途を探っており、円安などが続けば日本企業の「バーゲンセールは続く」とし、「多くの日本人が外国人資本家のために働く時代が来る」と述べた。
三田証は創業家三代目である邦博氏の社長(2001年-22年)時代から数々の敵対的買収で企業の代理人を務めてきた。最近では23年秋に相手方の同意を得ないままニデックが発表した工作機械メーカーTAKISAWA株式の公開買い付け(TOB)を手がけた。同年末までにTOB代理人で累計53件の実績を持つ。
カナダのコンビニエンスストア大手アリマンタシォン・クシュタールによる買収提案を巡っては、7&iHDは価格面などから賛同しかねるとの趣旨の書簡を送付。これを受けクシュタールは8日、友好的な買収に向け協力したい意向を伝えていた。今後、同意が得られないままクシュタールが動き出せば敵対的な買収に発展する可能性もある。
三田氏は今回の買収提案によって、純資産が厚く不採算事業も長期的視点で育てる農耕型と、借り入れを増やしてでも事業拡大を進める狩猟型の違いが明らかになったと分析。農耕型は日本の伝統的な企業に比較的多く、経営観の選択を迫られている側面もあるという。
ブルームバーグのデータによると、株主資本利益率(ROE)は米S&P500採用企業の24年12月期予想平均18.22%に対し、TOPIX500は同8.75%と日本企業が大きく見劣りする。為替相場は11年の1ドル=75円台の最高値から足元で143円台と大幅なドル高・円安で日本企業には割安感もある。