群雄割拠のエコカーエンジン「電気編」 EV、PHV、燃料電池車は何が強みなのか?
■燃料電池(FCV)
長所:CO2ゼロ 短所:実用段階にさしかかったばかりで、不明点が多い 代表的な車種はホンダFCXクラリティ。 FCVとは、水素と酸素の化学反応で電気を作って走る電気自動車の仲間だ。環境性能では、EVと並んで現在考えられる中で一番の優等生。ほぼ理想形である。FCXクラリティの場合メーカー発表の航続距離は620キロであり、少し前のガソリン車より長い。 ガソリンの代わりに水素を補給するが、この水素ステーションは前述の充電スタンドとの比較においてさえ比べられないくらい少ない。現在環境省主導でこの充実が図られているところなので、10年後には全く違う状況になっているかもしれないが、現時点ではまだ無いに等しい。 これまで一番大きかった問題は車両価格が1億円以上もしたことだ。そのためこれまではトヨタやホンダがリース形式で少量を貸し出している程度で、実用段階とは言い難かった。 ところが今年トヨタがこのFCV「トヨタFCX」を年内に700万円で販売すると発表したことでにわかに状況が変わった。安倍首相はこのFCXに200万円の補助金を出すと明言し、その後の新聞報道では、上積みされた300万円で政府が検討中という情報が加わり、さらに自治体からの補助金までが検討されているという。仮に350万円の補助金が出るなら、少なくともFCVは一気に現実的な選択肢に入ることになる。 現在の水素の価格は1立法メートルあたり100円台前半というところで、計算上の距離当たりコストはほぼハイブリッドと同等になる。ただし燃料電池の効率もまだ途上にある上、水素スタンドが普及した時に水素の相場がどの位に落ち着くかはまだ予想できない。水素の製造方法や輸送方法も次々と革新技術が現れている途中だからだ。 1990年ころから「次世代のホープ」と言われ続けて25年。ようやく事態が動き始めた。日本がこのジャンルに先鞭をつけることの意味は極めて大きい。前述のインフラ整備についても国策で状況が急激に加速する可能性はないとは言えない。 トヨタFCXについては、700万円という値付けがおそらくはトヨタの出血価格であり、さらに税を投入した補助金が加わっている。そうした特殊な状況をクリアして300万円くらいで普通に販売できる状態になるのかならないのかが大きなキーポイントになるだろう。