群雄割拠のエコカーエンジン「電気編」 EV、PHV、燃料電池車は何が強みなのか?
■プラグイン・ハイブリッド(PHV)
長所:EVモードではCO2ゼロ、ハイブリッドモードでは航続距離の制約がない 短所:価格がやや高い 代表車種はトヨタ・プリウスPHV。 名前こそハイブリッドとよく似ているが、運用上はEVの仲間。普段は「EV」として使うことが前提で、その場合CO2排出はゼロ。しかしバッテリーを使いきってもハイブリッドとして走ることができる。考え方としては予備動力用エンジンがついたEVだ。「いつでもどこでもどこまでも」という移動の自由度の高さがEVとの違いだ。 プリウスPHVの場合、EVモードの航続距離は、メーカー発表で26.4キロと極端に短いが、このバッテリー容量は国交省の調査に基づいて決められている。自動車ユーザーの一日当たりの走行距離は大半が20キロに満たないのだ。 例えば、片道10キロ程度の通勤往復であれば、完全にEVとして運用可能だ。15キロの往復でもハイブリッドで走行する比率は少ない。重要なのは初乗り部分はEVであること。CO2ゼロかつ低動力コストの部分は、短距離でも長距離でも必ず使えるということだ。 リーフの項で挙げたテスラのように、バッテリーを過剰に積む重量的無駄を考えれば賢明な選択だろう。その無駄を切りつめられた最大の理由は、電欠の不安が皆無だからだ。実利の大きいシステムである。 計算上、充電一回のコストは35円。電気だけで走る場合は1キロあたり約1.3円。ガソリンで走る場合は約4.6円と圧倒的に電気で走る方が安く、環境負荷も低い。 ただし、プリウスPHVは急速充電には対応しておらず、充電スタンドなどにあるEV用充電器とはソケット形状も違うため、充電はプリウスPHV専用の充電設備が必要かつ時間も90分ほどかかる。トヨタ・ディーラーに行けば無料で充電してくれるとは言うものの、航続距離は前述の通り26.4キロだから、電欠毎に充電するのは非現実的だろう。 トヨタ自身が明言しているが、急速充電はとても効率が悪い。今後PHVが普及した際、ものすごい数のクルマが一気に急速充電をすれば、インフラ電力に多大な負荷をかけ、全体としてのエネルギー効率も落としてしまう。それゆえ家庭で充電した分を使いきったらガソリンでハイブリッド走行というコンセプトでシステム設計されているのだ。イメージとしては「毎日の通勤はEVで。休日の遠出はハイブリッドで」ということなのだ。 価格面ではほぼ300万円からと若干高めだが、クルマにとって大切な移動の自由を制限せずに、日常的にCO2ゼロを実現し、ランニングコストも安いという意味で、現在のインフラを前提にすれば、もっとも現実的な選択肢だと思う。