群雄割拠のエコカーエンジン「電気編」 EV、PHV、燃料電池車は何が強みなのか?
■電気自動車(EV)
長所:CO2ゼロ、一般に夜間電力を使うのでランニングコストが非常に安い 短所:充電に時間がかかる、インフラ整備が不十分 代表的な車種は日産リーフ。 ご存じの通り、EVは電気をバッテリーに蓄えて走るクルマだ。走行中のCO2排出量はゼロと理想的。当然電力会社から供給される電気で充電するのだが、そのインフラ電力発電時のCO2負荷の話に及ぶと社会政策の話まで広がってしまうのでここでは触れない。 リーフの場合、メーカー発表の航続距離は228キロとだいぶ短い。しかも、電気の補充は急速充電でも30分を要する。となると気になるのは出先でのガス欠ならぬ電欠。バッテリーが空になるまでに充電スタンドにたどり着き、30分かけて充電しなくてはならない。仮にその30分を休憩時間と割り切ったとしても、充電インフラの充実も課題となる。都市部や高速道路沿いはともかく、地方の一般道での充電設備となるとまだまだ無いに等しいエリアもある。 もう一点気をつけなくてはならないのが暖房に関してだ。エンジン付きのクルマの場合、例えヒーターを使わなくても車内にエンジンの熱が伝わって多少の暖かさがあるが、EVには熱源が無い。そのためヒーターへの依存度が高いのだが、ヒーターは電力消費が大きく、航続距離ががっくり落ちてしまう。まあそもそも論で言えば、エンジンがそんなに熱を捨てていることがエネルギーの無駄遣いという面もあるのだけれど。EVの話題に戻れば、暖房だけでなく冷房に関しても航続距離への影響は大きい。 これらの問題はほとんどがバッテリーの容量に起因するわけだが、航続距離と引き換えにバッテリーの容量を抑え、コストを圧縮した結果、補助金を加味した車両価格は234万円と普通のプリウスと同程度を実現しているのだ。いくら環境に優れたシステムでも、誰も買ってくれないようでは社会に貢献できない。そこにEVの苦悩はある。 例えばテスラS85は502キロの航続距離があるが、それは車両価格約1000万円、車両重量約2トンというエコの定義に疑義が生じるようなコンセプトで成り立っている。電池切れに備えるために、普段は使わない重い大容量バッテリーを常に運んでいるとすれば、本末転倒という指摘は避けられない。しかもバッテリーの容量が増えても電欠の問題が根本的に解決するわけではなく、あくまでも頻度の差でしかない。むしろバッテリーの容量が大きい分だけ充電には時間がかかる。リーフはそこを真面目に考えた結果として現実的なバランスをとっているのだ。日本の自動車メーカーは真面目である。 さて、そのリーフにはどんなメリットがあるのか? いつでもどこへでも気にせず走りだせるという運用の弾力性には目をつぶらざるを得ないが、航続距離内の通勤など、決まったルートで使うなら、自宅や勤務先などにある充電設備を利用できるので少なくとも充電問題は解決する。 そうなると充電満タンが1回300円という圧倒的低コストは非常に魅力的だ。環境問題は、特別な時に頑張るより、日々の積み重ねの方が遥かに大切だ。その意味では毎日の通勤をCO2排出ゼロにできることは極めて意味が大きい。しかも国全体で見ればだぶついている夜間電力を活かすことができる上、ユーザーにとっては、災害時には家庭用電源としても利用できるメリットもある。非常電源としてのメリットはEVの仲間全てに共通のメリットである。