情報はインターネットがベスト、という考えに異を唱える。学生発信「金沢シーサイドFM」の挑戦
「一周して」価値を発揮できる、“地域×ネットワーク”の強さ
天野 そんなお二人主導で、新規事業も考えているんですよね? 松原さん そうですね。 コミュニティFM局の存在意義は、社会課題の解決だと考えていて。 今構想しているのは、影響力のあるタレントさんやアスリートが社会課題の解決につながるようなコンテンツを発信する番組をつくって、それを全国のコミュニティFM局と連携し、放送するというビジネスです。 天野 テレビの「系列局」のように、制作した番組をいろいろな地域で放送するネットワークみたいなイメージですかね…? 松原さん まさにそうです。 マスメディアではない、地域から発信された情報を扱いつつ、ネットワークとしての強さを武器にしていきたい…という発想ですね。 そうすれば、コミュニティFMのビジネス的な価値を向上させつつ、地域の活性化にもつながるんじゃないかと考えています。 天野 めちゃくちゃいいですね。個人や地域からのリアルな発信が価値を持つと言われる時代ですし、それが広く届くという。 松原さん ローカルなコミュニティFMは“斜陽産業”とも言われがちですが、僕はやはり、一周してその価値が発揮できると思っている。 私たち金沢シーサイドFMは、コミュニティFMの価値を再定義・リブランディングしていくことで、ラジオ業界を変え、街の未来を変えていこうと考えていますね。 幼少期から情熱を注いだ野球での「限界」という厳しい現実。 松原さんがそれを乗り越えて「ローカルメディアの力で社会課題を解決する」という新たな目標を掲げることができたのは、「“このまま野球を続けていても幸せになれない”というジャッジを下せたから」。 僕らも、目の前の仕事にくじけても“一周回ったら…”と大局的な視点で物事を判断していくとよさそう…と感じた取材でした。 〈取材・編集=天野俊吉/文=吉河未布/編集・撮影=森田志穂〉