情報はインターネットがベスト、という考えに異を唱える。学生発信「金沢シーサイドFM」の挑戦
「“ラジオは斜陽産業”という見方は、一周回って遅れている」
天野 ただ、今いろんな情報メディアがインターネットに置き換えられている時代だと思うんです。 そういうなかでも、“地域のラジオ局”が重要だとお考えなんですか? 松原さん 僕は、ラジオは斜陽産業という見方そのものが、一周回って遅れているなと思ってます。 インターネットって「グローバルとつながっている」と言いますけど、実際に自分が受け取っている情報ってすごく偏ってると思いませんか? それこそ、全世界の情報を全部自分が受け取っているわけじゃなく、実際は「世間で話題になっているもの」を受け取っているだけ…だと思うんです。 天野 あー、たしかに。「ネットはグローバルだから情報をたくさん摂取できる」もウソか… 松原さん 目立つ情報を受け取っているだけで、本当に必要な情報は受け取れてないことも多いかもしれませんよね。 特にローカルな地域の、半径10~20km圏内の情報ってなかなか取得しづらいと思ってます。 これを、私たちは地域情報の過疎化と定義しているんです。 天野 地域情報の過疎化、ありそうです。 松原さん 地域情報の過疎化を解消することによって、地域が活性化していく。それを実現するのがラジオ局ということです。 「AM放送」は大型のアンテナで広範囲に届けられる一方で、「FM放送」は近い範囲にのみ届けるかわりに音質がいい…という特徴があり、我々のような「コミュニティFM局」が各地域に存在しているんです。 天野 なるほど。それで“ローカルなラジオ=コミュニティFM”という印象なのか。
コロナ禍だったからこそ気づいた、「地域に支えられている」こと
天野 吉田さんも、松原さんと同い年なんですね? どういう経緯で入社されたんでしょうか。 吉田さん 私も地元が近くて、家の近くの食堂でたまたま“パーソナリティ募集”のチラシが貼ってあったのを見かけて、学生ながら応募してみたんですよね。 私たちの学生時代って、ちょうどコロナ禍で社会と分断されていたころで… 天野 たしかに。 吉田さん ただ、家のまわりを散歩することだけはできたじゃないですか。 地元を歩いていると、富士山が見える場所や、海が見える高台とか素敵な場所がたくさんあって。 世の中の活動が停滞しているときだからこそ…なのか、“この街に支えられている”ってしみじみ思えたんです。 天野 コロナ禍って、普段は見過ごしていた“当たり前”のありがたさに気づくことがけっこうありましたよね… 吉田さん そういった経緯で、松原から“ぜひ入社してほしい”と。 それで、まちづくりにも興味があったし、私が力になれるならと思って入社を決めました。