内田篤人が電撃引退を発表…32歳の”レジェンド”が鹿島に残す財産
2018シーズンは12試合、小笠原氏からキャプテンを引き継いだ昨シーズンは10試合、そして今シーズンは現時点で新型コロナウイルスによる長期中断から明けた初戦となった、7月4日の川崎フロンターレ戦で先発した1試合だけの出場となっていた。 「自分は大事な試合で、ピッチに立っていなければいけない立場だと思っている」 忸怩たる思いも込められていたように聞こえる言葉を内田本人から聞いたのは、左ハムストリング筋損傷から復帰したばかりの2018年11月中旬だった。戦列を離れている間には内田をして「大事な試合」と言わしめたひとつであり、アントラーズが長く悲願としてすえてきた、イランの強豪ペルセポリスとのAFCチャンピオンズリーグ(ACL)決勝も行われていた。 ホームで11月3日に行われたファーストレグで2-0の快勝を収めていたアントラーズは、同10日には10万人もの大観衆で埋め尽くされた、首都テヘランのアザディスタジアムでのセカンドレグに臨んだ。相手の猛攻に耐え忍んだ末にもぎ取ったスコアレスドローとともに、初めてアジアの頂点に立った一戦は、放映権をもつ日本テレビのBSやCSで日本へも生中継されていた。 11日に日付が変わった深夜の激闘を、テレビの画面越しに応援していたと思い込んでいただけに、内田から返ってきた「いや、オレ、試合を見ていないんですよ」という言葉にちょっと驚かされた。 「まあ、ファーストレグを2-0で勝っていたら負けないでしょう。プレーするみんなはそういう気持ちじゃないと思うけど、見ている方はそんな感じだったからね」 やや素っ気ないように聞こえて、実はアントラーズへ注ぐ愛が凝縮されている言葉でもあった。頑なに「敗北」の二文字を拒絶する、神様ジーコが礎を築いた黎明期から受け継がれてきた常勝軍団のDNAが、ACLを勝ち進むごとに力強く脈打ってきたと感じていたのだろう。