昭和オヤジには見慣れた「高速の標識文字」が様変わり! 40年以上使われた手作りの「和文公団文字」が終わりを迎えていた
■時代の変化により、見直しの必要に迫られる
40年もの間、本当に多くのドライバーに情報を伝える役割をしっかり果たしてきた「和文用公団文字」ですが、徐々にその文字に対する懸念が囁かれるようになってきます。 そのひとつは公共の場に「正しくない文字」を掲示するのはどうなのかという点です。 先述のように和文用公団文字は、認識率を高めるために文字の一部を削っているので、正しい文字とは食い違ってしまっています。 たとえばその文字を、漢字を勉強中の子どもが見てそのまま覚えてしまった場合、矯正しない限りそのまま間違った記憶で過ごしてしまうことになります。それは日本を訪れる外国人にもいえることで、国際社会に対する責任を考えた場合、そのままでいいとはいえないでしょう。 また、和文用公団文字は手作りで作成されたため、文字ごとの筆致のばらつきが生じてしまいフォント全体の統一感に欠けているという指摘もあったようです。 また、デザイン的な面としても、画数が異なる文字でも基準枠いっぱいのレイアウトにしているため、並べた際のボリュームのバランスが良くないという面もあります。 それらの点を考慮して、2010年に文字の見直しが図られることになりました。
■新しい和文体は商業フォントから選定
和文用公団文字が開発された時代とは異なり、2010年の時代は認識率に優れるデジタルフォントが多く作られていますので、そのなかから従来の文字と同等かそれ以上の認識率を持つフォントを選ぶことになりました。 候補は以下の4つです。 ・ナウ 印刷機メーカーが1987年に発売したグッドデザイン賞受賞歴のあるフォント。 ・タイプバンク クリエーター系文字メーカーが1988年に発売。鉄道会社がサインシステムに採用していた「ゴシック 4550」との類似性に着目して選出。 ・新ゴ 写真植字機メーカーが1990年に発売。先に道路会社が標識のデジタル化に採用実績がある ・ヒラギノ クリエーター系文字メーカーが1994年に発売。2001年にMac OS Xのシステムフォントとして採用された実績を考慮して選出。 認識率を確認するため、文字つぶれの再現としておこなわれる「ぼかし印刷」という方法で比較した結果は、4つのすべてのフォントが合格点で、大きな差はないと判断されたそうです。 そこで細かく評価を行い、そこで優位点として認められたのが「オブジェクト・エンハンスメント」の面でした。 「オブジェクト・エンハンスメント」というのは、文字を拡大縮小した際に文字の先端部が欠けてしまう現象を避けるために三味線のバチのように末広がりに処理することです。 この点が優れているとして、新しい標識の和文用文字に「ヒラギノW5角ゴシック体」が選ばれました。 新しく採用されることになったこのフォントは、新しく設置される標識から徐々に切り替えが行われているので、いまではいろんなところで確認できるでしょう。 旧式の「和文用公団文字」に愛着をもっている人にとっては寂しい状況ですが、変わりゆく新しいものを受け入れることも必要なのでしょう。 実際に新旧のフォントを並べてみると、遠目には極端な違いは感じられないくらいに雰囲気が似通っているので、走っている状態で見わけるのは難しいかもしれません。 少しだけ気にして標識を見て見ると面白い発見があるのではないでしょうか。
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