昭和オヤジには見慣れた「高速の標識文字」が様変わり! 40年以上使われた手作りの「和文公団文字」が終わりを迎えていた
■高速道路の案内標識が緑ベースになったワケ
高速道路の標識は緑、一般道路の標識は青だということはほとんどのドライバーが知っていることだと思いますが、ではなぜ高速道路には緑が使われているのでしょうか? その理由は認識性の高さにあります。 高速道路の標識に関するさまざまな決めごとは、昭和38年に日本で初めて開通した名神高速道路の運行のために「日本道路公団(現NEXCOの前身)」によって色使いや表記法、デザインなどが定められました。 定められたといっても当時の日本はまだクルマ社会の後進国であったため、すでに運用されている欧州やアメリカの標識が参考にされたそうです。 当時は欧州の主要国が青系主体で、アメリカが緑系主体でした。どちらも視認性に優れる色使いで説得力があったため、最終的には両方を高速道路の走行シチュエーションで実験し、ライト照射時の見え方などを検証した結果、高速道路は緑、一般道は青となったそうです。 ちなみに運営団体が別々のためか、同じような緑を使っているのですが、首都高速とNEXCO系3社の使う緑は、その色味が若干異なるそうです。
■案内標識は「標識令」によって表示の方法が定められている
標識板の色彩は、「道路標識、区画線及び道路標示に関する命令」(通称「標識令」)により定められています。 前述の色使いのほかにも、出口や方面の単独表示の際には、メインとなる漢字の文字が50cm四方、補足の英文字が高さ20cmというような具合に細かく定められています。 この文字の寸法はかなり巨大に感じますが、高速道路では高速で走る車両を運転するドライバーに遠くからしっかり文字を認識させるために必要な大きさです。そのため、一般道の標識の文字よりも大きく設定されています。
■標識のフォントは当初は手作りだった?!
先にいってしまうと、現在NEXCO3社が採用している和文用のゴシック体フォントは「ヒラギノ」です。 いまでこそ和文用のフォントもさまざまなものが作られていますが、高速道路用の案内標識の原型がつくられた昭和38年当時は活版印刷用の限られた文字しかありませんでした。 その文字はあくまでも書籍や印刷物用のものであったので、高速道路で速い速度で移動する車両を運転するドライバーの目に一瞬で誤認することなく認識させる目的に適しているとはいえず、必然的に独自の書体を生み出す必要があったそうです。 当時はグラフィックソフトなどなかった時代なので、書体を生み出す作業はすべて手作業です。しかもひと文字ひと文字を、認識性を高めるという一点を向上させるため、個々にアレンジしていったそうです。 そのために設けたルールは、まず認識率を高めるためには大きさが有効だという考えから、基準枠をいっぱいまで使ったレイアウトとすることでした。それによって画数が多い文字でもすき間がつぶれることが抑えられます。 もうひとつは直線を基調としてなるべくシンプルにまとめることです。 この2点を文字に反映させることでかなり認識率を高める方向性にまとまりましたが、そこで立ちはだかるのが漢字ならではの画数の多い文字の複雑さです。要するに線が多すぎて余白がつぶれてしまい、文字の認識率が保てないのです。 開発者たちはここで大胆な手法を採る判断をしました。認識性を高めるため、文字に断捨離を施したのです。 具体的にはハネなどの装飾として見なせる部分を切り捨てます。そしてさらに横棒が連続する部分の一本を端折ったりと、さまざまな工夫を臨機応変に凝らしました。 その試行錯誤しながらの手作業による努力が実を結び、機能性の高い文字が完成。「和文用公団文字」として、大きく変わることなく40年もの長きにわたり活用されてきました。