民藝・イズ・ビューティフル。 日本文化と黒人文化が融合する「アフロ民藝」とは?
5つある展示スペースのうち、日本の無名の工人が造り出したオブジェの持つ歴史を超える民藝と、アフロ/ブラック・カルチャーの神聖なる祝祭性が生み出してきた2つの美が拮抗しながらも居を同じくする、その名も『アフロ民藝』スペースは、今回の展示のパンチラインだといえる。 ゲイツが20年前に初めて訪れた常滑の焼き物が圧倒するように無数に並べられ、本来なら天井から吊り下げられているはずのミラー・ボールにインスパイアされたと思われる、SF映画に出てくるパワーストーンのごとき立体が床から光線を発し輝く。その側面にはゲイツの世代にとって忘れられないディスコやR&Bのアナログ・レコードとDJブースが設置されている。それらを見下ろすのはアルファベットとカタカナ、漢字によって表記される「AFRO MINGEI/アフロミンゲイ」とか「TOKONAME YAKI」とか、果ては「TOKOSSIPPI」といった言葉の刻まれたペインティングやオブジェだ。この最後の展示スペースと辿りつく前に、私たちは旅するように異なった「アフロ」×「民藝」の展示に迎えられる。
最初の展示スペース『神聖な空間』は静謐な、色調の抑えられた中、7台のスピーカーとゴスペルの伴奏楽器〈ハモンドオルガンB-3〉からなる《ヘブンリー・コード》というゲイツ自身の作品や影響を受けた作家の作品が並べられており、気がつくと私たちは常滑製の煉瓦を踏みしめ歩いているだろう。
次は、横に縦に膨大に集められたその英語/日本語の書物のすべてが“アフロ”の歴史や文化にまつわるものだと理解したときに直観的な、なんともいえない感動が襲う『ブラック・ライブラリー&ブラック・スペース』であり、それは少なくともこの展示を観覧できる、つまり、戦場や難民キャンプといった環境にいることから免れた人々には、いつだって知が開かれていることも示唆している。
『ブラックネス』スペースには、『神聖な空間』に続いて再びゲイツ自身と彼の家族のバイオグラフィ的な要素と関連したタールの作品が登場し、体育館の床材を再利用した大型の作品、またオリエンタル/アフリカともモダニズムの美とも感じられる陶器など、ゲイツや他の作家の作品それぞれの複数の視線が“黒くあるということ”を認識させられるが、同時にそれはその視線と理由を問い直しているかのようでもある。