民藝・イズ・ビューティフル。 日本文化と黒人文化が融合する「アフロ民藝」とは?
陶芸、建築、音楽など、ジャンルを横断して活動するシアスター・ゲイツは世界が注目するブラック・アーティスト。日本の民藝運動と自身のオリジンでもあるブラックネスを合わせた新たな「アフロ民藝」という概念を生み出した。日本初、アジア最大規模となる個展です。 【フォトギャラリーを見る】 まず「アフロ」とは、アフリカ系の、という意味のそもそもは英語の形容詞である。この言葉が広範囲に広まったのは1960年代で、彼らの独特なヘア・スタイルを指す名詞としての「アフロ」もカタカナで今では日本のお茶の間でもお馴染みだ。一方、「民藝」は、柳宗悦が大正時代の終わりに提唱した民衆的藝術という言葉を短くした日本の芸術運動を指す言葉──なぜこの出自のまったく異なる二つの言葉が現代美術の展示のタイトルとして並ぶ顛末になったのか。 時を遡り2004年、いわゆる日本六古窯、すなわち越前、瀬戸、常滑、信楽、丹波、備前のうち、平安末期よりの歴史を持つ愛知県は常滑に、当地の焼き物を学びに30歳のアメリカ青年が訪れた。それから20年を経た2024年、グローバルなアート・ジャーナル『ArtReview』の “現代美術界で最も影響力のある100人” のリスト「パワー100」の7位に選ばれたのは、今や壮年となった彼であって、ヒゲも少しは白くなっていた。
アメリカはシカゴ出身の彼こそはシアスター・ゲイツ、この「アフロ民藝」という奇妙でユーモアに溢れ、俗っぽくもスピリチュアル、知的にも高度な現代美術の展覧会を六本木の〈森美術館〉で開催中のアーティストなのである。 展示スペースに足を踏み入れる私たちは、この出自の異なる「アフロ」と「民藝」の2つのコンセプトが、工芸、彫刻、絵画、インスタレーション、それから膨大なブラック・カルチャーや焼き物のアーカイブ、時には音楽パフォーマンスまでに化して超合金のトランスフォーマーさながら組み合わされたスペースを目撃することとなる。