《老後資金を貯めて後悔した実例》「財産を巡って子供たちが険悪に」「資産狙いで詐欺の危険」…専門家「貯金や定年後も働いていれば、大きな額を貯める必要はない」
親の残したお金で家族がバラバラに
「残ったお金が子供や孫のものになるなら、使い切れなくてもかまわない」と考える人もいるだろうが、親が残したお金で家族が崩壊してしまう例もある。 畑だった土地が公共事業の建設予定地になって莫大な補償金を手にしたYさん(73才)は、子供たちの「争族」をいまから心配している。 「娘も息子も、この20年親の存在なんて忘れたようにほとんど連絡もよこさなかったくせに、お金が入ったとわかった途端に頻繁に家に来るようになって、やれ“困っていることはないか”“家の掃除をしようか”と、張り合うように私のご機嫌取りに必死。私が死んだらどうなることかと、不安で仕方ありません」 そんな不安が現実となったのは、Fさん(56才)。父の死後、骨肉の争いに直面した。 「父の貯めていた1500万円の遺産分割を巡る姉と兄の争いは、それは醜いものでした。最後には母の住む実家まで処分して現金化し、お金だけ分け合って、きょうだいはほぼ絶縁状態。母は私が引き取りましたが、母は財産を残した父のことまで恨むようになり、毎日が苦しいです」 相続準備をせずにお金だけ残せば、争族は避けられない。プレ定年専門ファイナンシャルプランナーの三原由紀さんが言う。 「財産分与の際の親族間の腹の探り合いは、仲がよくても消耗するもの。たとえ相続税がかからない金額でも、遺言書を用意するなどの対策を取っておくべきです」(三原さん)
2000万円なんて目指さなくていい
「貯めること」が目的化してしまうのは、ひとえに「不安」が原因だ。社会保険労務士でファイナンシャルプランナーの井戸美枝さんは言う。 「いわゆる2000万円問題は“貯蓄も労働収入も1円もなく、年金だけで暮らさなければならない世帯”を想定しており、貯金や資産があったり、定年後も働いていれば焦って大きな額を貯める必要はないでしょう。また、高齢になってからは住宅ローンや教育費はかからないケースが多いことや、年金額も人それぞれ異なることなどは考慮されていません。“生涯でいくら足りないか”ではなく“1年間であといくら増やせばいいのか”を考えれば、そう不安になることはないはずです」(井戸さん) 一般的に、高齢になってから必要な生活費は現役時代の7割程度だといわれている。貯蓄額や年金額など、まずは「いまあるお金」と「これから必要になるお金」を把握することだ。 『75歳からの生き方ノート』などの著書を持つ著述家の楠木さんは、ノートに手書きで財産管理表をまとめているという(図参照)。 「財産の額とその増減を半年ごとに把握することで、暮らしを続けるための本当に必要な金額がわかります。20年後、30年後の将来に漠然とした不安を抱かなくて済むはずです」(楠木さん) 人生後半を見据え、私たちが直面する課題は「どう貯めて増やすか」ではなく、「どう使い切るか」だ。それがきっと、後悔のない最期につながるだろう。 ※女性セブン2024年12月19日号
【関連記事】
- 《家で最期を迎えるための“家族会議”》実際に見送った人が語る“充足感”とやっぱり必要だった“資金” 上手に逝くにはエンディングノートの活用も
- 《老後ひとり暮らしの壁》介護が必要になったけど“身近に頼れる人がいない”どうする?
- 《認知症になった末の資産凍結を避けるために》「法定後見」「任意後見」「家族信託」認知症になる前に使える制度、なった後に使える制度の違いを徹底解説
- 《老後の心配事をなくすために知っておきたい》老後資金を有効に使う「老後資産三分法」と、老後のお金の危機をもたらす「3つの波」
- 《20代で1000万円の資産》節約オタクが実践、スーパーで買い物するときのルール「買い物を土曜日の週1回のみ」「見たら負けの精神を持つ」