「ザ・ワールド」よりも「ヘブンズ・ドアー」――高橋一生が語る岸辺露伴と「ジョジョ」、そして自分
どんな役でもプレッシャーは考えないようにしている
漫画の岸辺露伴は設定上1979年、高橋は1980年生まれだ。 偶然この年の近いキャラクターを知ったのは、高橋が17、18歳の頃。「露伴の物事を突き詰めていく姿勢には、ずっと才能を感じてきた」という。 人気漫画のキャラクターを実写で演じることに、プレッシャーはなかったか。 「対外的にはプレッシャーは、特になかったです。それは人の顔色ばかり伺うことになるので、どんな役をやる時にも考えないようにしています。ですが、対内的というか、自分に対してはありました。どこまで自分が納得したものにできるか、という意味で」 高橋は子どもの頃から漫画をよく読んできた。誰かが作ったストーリー、起承転結のあるレールは、小説で想像しながら読むよりも、漫画で追う方がしっくりくるのだという。 「小説も読むんですけれど、どちらかというと、まったく違うところにあちこちレールが引いてあるような…詩や、哲学書のようなものを好んできました。バイロンや室生犀星などの詩や散文、そこには直接的なものはあまり語られないので、『これは何を意図しているだろう?』『ああ、こういうことなのかもしれない』というふうに、自分自身で取り込んでいくことになる。そういう読み方が、自分には合っていると思っています」
他者、自己との向き合い方を「ジョジョ」から学んでいる気がする
作品に散りばめられた概念を見つけて、自分の人生に落とし込むという作業が好きなのだ。だからこそ、ジョジョシリーズは高橋に刺さった。 「ジョジョシリーズには、例えば『波紋』という秘術が出てきますけれど、これらはあくまで登場人物たちの精神性を表現するものです。表に映っているものが現実に即していなくても精神性を語ることができるというのが、素晴らしいところなんじゃないかと。問題にどう対峙するか、登場人物それぞれが独自性をもって乗り越えていく。他者、自己との向き合い方というものを、ここから学んでいるような気がします」 足掛け4年にわたって岸辺露伴を演じてきたが、高橋はまだ原作者の荒木飛呂彦に会ったことがない。 「ドラマに出てくる泉京香というキャラクター(飯豊まりえ演じる、露伴の担当編集)は、もともと原作に1度しか出て来なかったんですが、ドラマの2期が放送された後、漫画の新作エピソードの中に泉京香が登場したんです。実写版が漫画に何かしらの影響を及ぼしているのだろうか?と考えると、僭越ながら、漫画と芝居で会話をしている感じがあって、往復書簡のようなことができている気がします。直接お話をする機会があれば、それはそれでありがたいなと思いますけれど、今のこのスタイルはけっこういいかもしれないな、とも」