「日本車王国」タイに迫る中国EVの影 カフェ文化も独特、バンコク探訪記
■古都アユタヤに集う象とトゥクトゥクとEV
バンコク市内に、若者を引きつける次世代型の商業コンプレックスも誕生しました。2023年12月1日にオープンしたプロンポン駅に直結する6階建てのショッピングモール「エムスフィア(EMSPHERE)」です。 このエムスフィアで私が最も多くの時間を割くのが、3階にある自動車展示スペースです。このスペースでは、タイでこれから発売されるEVの展示車両を見ることができるからです。 多くが中国メーカーや中国企業傘下のグローバルブランドですが、販売員と会話する中で、タイ国内でのEVの価格動向や顧客層、顧客ニーズの変化などについて知ることができ、東南アジアの中でも特にEVシフトが速いタイの自動車産業と消費者の最新動向を確認できる、貴重な取材場所です。 最後に、バンコクから日帰りでも行ける世界遺産の街・アユタヤも少しご紹介します。 バンコクの北約80kmに位置するアユタヤは、かつてはタイ内陸の交易の中心として約400年も繁栄を続けたアユタヤ王朝の都で、当時の面影を残す遺跡を巡る観光スポットとしても有名ですが、多くの日本企業が進出する工業団地もあり、ビジネスでも日本にとってなじみ深い場所だといえます。 神秘的な遺跡群が残るアユタヤでは、日中は象に乗って遺跡を見学できるほか、懐かしさを感じるダイハツの三輪車「ミゼット」のスタイルを取り入れたトゥクトゥクに乗って街を探索することもできます。 アユタヤの街中では、バンコク同様にEVを見かけることが多くなりました。また2024年春、遺跡群の周りを自動運転レベル4の自動運転バスによる走行実証実験が行われました。近い将来、アユタヤは次世代車と象が混在する街になっているかもしれませんね。 文・写真:深尾三四郎(伊藤忠総研 エグゼクティブ・フェロー)
深尾三四郎
ミレニアル世代のモビリティーエキスパート。車産業における世界最大のブロックチェーン国際組織で理事を務め、世界中を飛び回る。高校と大学で英国留学。国内外で講演やメディア出演多数。趣味はドライブでの秘境巡りとおいしい卵かけご飯を探すこと。好物は日本酒とチョコ。 ※この記事は「THE NIKKEI MAGAZINE」の記事を再構成して配信しています。