夜の道路灯や防犯灯が「アルツハイマー病」の要因になる!? 夜間の“光害”は若者に悪影響であることが英研究結果で明らかに
夜間に光害(ひかりがい)の影響を過度に受けることが、アルツハイマー型認知症の発症リスクを高める可能性があることが確認されたという。認知症の一種であるアルツハイマー病は、脳の機能が低下していく疾患。記憶や感覚、発話、行動などに影響が及ぶことがわかっている。 【写真】記憶力が上がる!? 脳に効果的な「6つの食品」 例えば、イギリスの国民保健サービス(NHS)によると、イギリス国内ではこれまでに、94万人以上がこの病気を含む認知症と診断されており、患者数は増加を続けている。診断されるのは65歳以上の人が多く、この年齢以上の11人にひとりが、アルツハイマー病を含む認知症を患っていると推定されている。ただ、過去の研究結果から、より若い年齢の人にも発症のリスクがあることが明らかになっている。 いっぽう、アメリカのラッシュ大学医療センターの研究チームがジャーナル「フロンティアズ・イン・ニューロサイエンス(Frontiers in Neuroscience)」に新たに発表した論文によると、夜間の光害が、65歳未満の人たちにとって重大なリスク要因になる可能性があることがわかったという。 研究チームは2012~2018年の衛星データを用い、アメリカの各州の夜間光強度の平均を調査。また、厚生省のメディケア・メディケイド・サービスセンター(公的医療保障制度の運営主体)が提供するアルツハイマー病の有病率に関するデータを入手し、2つのデータセットを比較した。 その結果、夜間の光害の強度が高い州では、アルツハイマー病の有病率が高くなっていたことが確認された。さらに、65歳未満の人に限定すると、発症との相関関係は、腎臓疾患や肥満といったその他のリスク因子よりも、夜間の光害の方が強くなっていたという。
結果が意味することは――?
アルツハイマー病のリスク因子とそれらの影響を受ける可能性がある人たちについての理解を深める上で、この研究結果は大きな発見といえる。論文の著者のひとり、ラッシュ大学のロビン・ヴォイト=ズワラ准教授(内科学)は結果について、次のように説明している。 「(65歳未満で発症する)早期発症型アルツハイマー病に影響を与える遺伝子型の一部は、生物学的ストレス因子への反応にも影響します。それが、夜間の光への曝露による影響を、さらに大きくしている可能性があります」 「また、若い人ほど都市部で暮らす傾向があります。その生活スタイルが、夜間により多くの光に触れる機会を増やしていると考えられます」 こうした結果は、不安感を高めるものかもしれない。だが、覚えておくべき重要なことは、光害が「修正可能なリスク因子」であるということ。つまり、リスクにさらされている人も自分の行動によって、夜間に接する光の量は減らすことができる。