カスレ、オニオングラタンスープ 冬に楽しむ熱々フレンチ煮込み、銀座で本場の味を
連載《グルメモード》
暖かい秋がやっと終わり、熱々の鍋料理が恋しい季節がやってきた。フランスには日本のように皆でつつき合う鍋料理はないが、各地方の郷土料理には寒い冬に食べたくなる煮込みの逸品がたくさんある。 【写真はこちら】見るからにアツアツ! オーブンで加熱した「オニオングラタンスープ」、「シュークルート」や「トリップの煮込み」もチェック! 煮込みというと単純な調理に思われがちだが、フランス料理には基本的な技法だけで、しっかり蓋のできる鍋で少なめの液体と一緒に蒸し煮する「ブレゼ」、とろ火で長時間煮込む「ミジョテ」、素材の水分だけ、または少量の水分か油分を加えて蒸し煮する「エチュベ」、低温の油脂で煮込む「コンフィ」、クリームで煮込み白く仕上げる「フリカッセ」がある。全て手間ひまかかることが通底し、即興で作る創作料理にはない滋味にあふれる。
■パリ以上にパリ的な「ビストロ ヌガ」
フランス各地の伝統的な煮込み料理を食べられるのが東京・銀座6丁目の商業施設「GINZA SIX(銀座シックス)」の裏通りにある「ビストロ ヌガ」。グランドメニューには60種もの料理とデザートが載る。驚異の品数だが、それ以外に黒板メニュー約20種と本日のデザート2~3種が日々用意される。メニューには伝統的なビストロ料理の名前がずらりと並び、読んでいるだけで楽しい。 店の雰囲気にはビストロらしい気安さと銀座らしいきらびやかさが共存し、一歩入るとここはパリ? と思うような粋さも漂う。現在はパリでも数少なくなった正統派のビストロだ。
■素朴な郷土料理の中にも繊細な味わい
お薦めしたい煮込みの1品目は「カスレ」。南西部ラングドック地方を代表する郷土料理だ。白インゲン豆と各種の肉類を煮込んだもので、ほくっと甘い豆が肉類のうまみやコラーゲンを吸い込んで濃厚になり、ボリュームも満点。食べると体が芯から温まり、まさに冬が旬。フランス風の煮豆といった風情もあり、数ある地方の煮込みの中でも、これほど日本人好みの料理は少ないと思う。 「郷土料理には油っこく、しょっぱいイメージがあり、そういう強い味を好む方もいらっしゃいますが、どの料理も本来の素朴さと繊細さを併せ持つよう作り方の各所に工夫しています」。こう語るシェフの梅津亮平さんが常に心がけるのは、郷土料理の中にも濃すぎず、重すぎず、洗練された味わいを出すことだ。