カスレ、オニオングラタンスープ 冬に楽しむ熱々フレンチ煮込み、銀座で本場の味を
■白インゲン豆と4種の肉、洗練されたカスレ
カスレの作り方をざっと説明すると、豆は日本産より小粒で食感のよいイタリア産を用い、鴨(かも)肉のエキスを加えた水で煮る。これとは別に8時間とろとろになるまで煮て骨を外し細かく刻んだ豚足、多めの白ワインで水分がなくなるまで煮たタマネギとトマト、豚足の煮汁を合わせて煮込みのベースを作る。冷やすとカチカチの煮こごり状に固まるほど、コラーゲン豊富なベースだ。 具材は鴨もも肉のコンフィ、塩漬け豚バラ肉、ソーセージ。全てが自家製だ。注文が入るとベース、白インゲン豆、食べやすい大きさに切った具材を合わせ、鋳物の鍋に入れてオーブンの中で煮込んでいく。このとき、途中で1回上下を混ぜて、表面に張った膜を煮汁に溶け込ますのがポイントだ。 こうして、ごった煮にはせず、材料一つ一つを個別に仕込んでおいて最後に合わせることで、それぞれの風味が冴(さ)え、「出来たて」のみずみずしさのあるカスレが完成する。
■牛胃をシードルで煮込むノルマンディー料理
2品目が「カーン風トリップの煮込み」。英国海峡に面したノルマンディー地方の名物料理で、トリップは牛の胃袋、カーンは町の名前である。この地方はリンゴの栽培が盛んで、地酒であるリンゴのお酒、シードルで煮込むのが特徴だ。 元来は牛胃だけで作るが、独特の弾力があるハチノス(牛の第2胃)、噛(か)むほどに脂の甘みが出るギアラ(牛の第4胃)にコリコリとしたガツ(豚の胃袋)を組み合わせ、食感に変化を出す。ハチノスは4時間、ギアラは3時間、ガツは2時間、塩水で下煮する。 別に牛のアキレス腱(けん)を8時間かけて煮込み、コラーゲンが溶け出したとろとろのスープを作る。これが煮込みのベースになる。カスレ同様、注文が入るとニンジン、タマネギなどの香味野菜を炒めるところから始めてシードル、スープ、トマトを加え、その中で3種の胃袋を煮込み、数種類のスパイスをピリッと利かせて完成。 「カーン風の良いところは、ほんのり甘いシードルで煮込むことで、他の内臓料理にはないふくよかさが加わるところ」と梅津さん。意外な組み合わせに思えるが、シードルと胃袋の驚くべき相性の良さに納得させられる。