「治る」目指せる大腸がん 予防と検診でリスク軽減、最新治療も
◇大腸カメラは早期発見のチャンス
ただ、「時間がない」「費用がかかる」「痛そうで怖い」「がんであると分かるのが怖い」などの理由から、検診の受診率は低水準で推移している。「早く見つかれば治る病気だという認識が浸透していない。早期発見のチャンスを逃さないで」と山口医師は訴える。便潜血検査の陽性反応を受け、大腸カメラに進み、がんと診断された人の割合は約4%だ。いたずらに怖がらず受けられる数値と言える。 検査をする医療機関も、鎮痛剤・鎮静剤を使い、無痛で受けられる施設が増えた。土日の実施や、下剤の服用から病院でできるなど、受診しやすい環境が整ってきている。 さらに、カメラの検診を受け陰性だった場合、次回はおよそ3年後で問題ないとされている。
◇生活見直しで予防
山口医師は、大腸カメラを積極的に受けてほしい人として、四つの条件を挙げる。①症状がある②家族に大腸がんの患者がいる③50歳以上④がんのリスクを高める環境にいる―だ。 ④のリスクを高める環境とは、喫煙、飲酒、肥満など。これらは他の種類のがんについても当てはまる。 国立がん研究センターは科学的根拠に基づいたがん予防の方法として、禁煙、食生活の見直し、適正体重の維持、適度な運動、節酒といった五つの健康習慣を実践することで、リスクを半減できると提唱する。 さらに最近は、発症の原因になる細菌やウイルスを除去することでも予防できるがんがあることから、関連する感染症の検査も推奨されている。
◇基本は切除
がんが見つかった場合、どんな治療になるのか。 まずは、肛門から内視鏡を挿入し、先端の穴から専門の器具を出してがんを切り取る内視鏡治療。がんが粘膜内にとどまっているか、浸潤が浅い早期がんが対象だ。取り残さなければ、これで完治となる。 方法は大きく分けて三つある。茎のあるがんは、金属製の輪で茎を締め付け高周波電流で焼き切る「ポリペクトミー」、比較的小さい平たい形のがんなら「内視鏡的粘膜切除術(EMR)」、20ミリ以上のがんは、小さな電気メスで切除する「内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)」。 手術になると、開腹、腹腔(ふくくう)鏡、ロボットの三つ。がんがある部分を含む大腸の切除と、転移の可能性がある範囲のリンパ節の切除を行う。 中でもロボット手術は、他の二つの欠点を解決し、利点も併せ持っているとされる。傷が小さく痛みも少ないため回復が早い、出血も少量で済む。腸を外に出さずに行うため、術後に腸閉塞を起こす可能性が低い。患者にとってありがたい話だ。 医師にもメリットが多い。3Dで体内を見ることができるため、空間が把握しやすい。先端がよく曲がり手ぶれしない鉗子(かんし)と拡大機能で、細かい作業もお手の物。処置の範囲も骨盤近くの奥まで可能だ。技術の習得も、腹腔(ふくくう)鏡に比べ短い期間で済むとされる。