創業55年・地元に愛され続けた尼崎の老舗ケーキ店 年明けに閉店へ…順調だったのに廃業のワケは「後継者がいない」惜しまれながら店主が抱く最後の日への思い
創業して55年を迎える老舗のケーキ店。店主は年明けの1月5日に店を閉じる決断をしました。50年以上店を続けたケーキ店がなぜその歴史に幕を閉じる決断をしたのか、店主の思いと閉店の経緯を取材しました。 【画像を見る】ショーケースに並べられたショートケーキなど 兵庫県尼崎市の阪急神戸線「園田駅」近くにあるケーキと洋菓子を販売する「洋菓子工房エトワール」。1969年に開店し創業から55年の老舗店です。 ショーケースには、ココアをたっぷりと使った生地にベルギー産ショコラノワールで作ったチョコレートケーキやいちごのショートケーキなどが並んでいます。
店主は父から継いだ2代目 修行を重ねるうちに菓子作りの楽しさ覚える
店主の濵田智行さん(57)。智行さんは2代目になります。智行さんは高校を卒業後、単身で関東方面のケーキ店に5年半修業を行い、エトワールに勤め始めたといいます。修行を重ねていくうちに菓子作りへの楽しさが沸いてきたと言います。 (濵田智行さん) 「最初はまず、高校3年生のとき、ちょっとお菓子でもやってみようかと思って、父にどこか修行できるところを紹介してと言ったら、関東に行かされて、そのまま5年半、向こうで、勤めて、帰ってきました。(その時に)やっぱりお菓子を作り出すと楽しいとわかって、学生時代、本なんか読むこともなかったのに、(お菓子に関する)本を読み漁ったりして、すごく楽しくなって今まで続いてしまった状態です」
店は順調なのに…突然「閉店」を決意
18歳の頃からケーキを作り始め、40年は経つという智行さん。12月に取材した日には、午前7時から厨房に立ち、ケーキが次々と仕上げられていきました。早い時には午前6時ごろ、夏場では午前7時ごろから厨房に立つといいます。 父親から店を継ぎ、順調に店を続けていた智行さん。しかし、今年秋ごろ、年明けの1月5日に店を閉めることを決めました。 (濵田さん)「本当はできればもうボロボロになるまでやれれば、本当はいいんでしょうけど、そうなってから店を畳むって、結構大変な事やなって。これが10年後に来たらちょっと自分ではしんどいなと思って。歴史もあるんで、できるだけ長く続けられるのがベストだと思いますけど、どこかで終わらさないとあかんというのもあったし、先代にもやめ方をよく考えとけよと言われていたので。今なら、きれいにやめられるかなというのもあります」 閉店の知らせを聞いた客からは惜しまれる声が多かったと言います。 (濵田さん) 「すごく寂しくなると言われて、それを聞くまでは閉めたら何しようとかしか考えていなかったのですが、これだけお客さんが言葉をおっしゃっていただけるので、ちょっと大変な決断をしたのかなという気持ちはあります。泣いてくださるお客さんがいると、ちょっと早すぎたんかなとも思います思いましたが、後悔はないです」