消防団員OBが早く火災現場着くも資格喪失でポンプ車扱えず 現役団員が急減する過疎地で浮かぶ苦悩
人口減が進む中、消防団の団員をどう確保するか。京都府南丹市では、市内にある大学で救急救命を学ぶ学生たちを「学生団員」に加えたり、元団員らシニア世代も活動しやすいように協議を始めたり、試行錯誤を続ける。 【写真】「OBもポンプ車扱えれば…」苦悩するOBたち 生き埋めになっている人を一刻も早く救いたい―。南丹市八木町南地区で2024年9月にあった防災訓練。棒をテコに、がれきを動かす方法を子どもたちに教えていた防災服姿の団員は、明治国際医療大(南丹市日吉町)の学生たちだった。 明治国際医療大には救急救命学科があり、学んだ技能を生かして消防職を志す学生が多い。市は、そうした若者を市消防団本部直轄の学生団員として21年から迎え入れている。 現在64人。小学校などの授業や訓練で指導を担う。火災時の招集はかからないが、自発的に現場に急ぎ、後方支援をする時もある。 学生団員を指導する明治国際医療大の木村隆彦教授は「消火の最前線とはいかなくても、高齢者や子どもに訓練で教えたり、高齢者宅に防災の呼びかけに行ったり、学生の得意分野を生かせば、学生の力も付く」と期待する。 京都府南丹市の消防団員は24年で1206人(学生団員と女性分団除く)。この10年で3割近く減った。学生団員ら新たな力はもちろん、元団員らシニアに頼らざるを得ない。 消防団員は18歳以上で「志操堅固かつ身体強健なる者」(市条例)を対象とする。条例などに記されていないが、従来は50代になると引退する団員も少なくなかった。ただ、若い世代は地域外で働く人が多く、地元の火事に駆けつけにくい。 南丹市美山町大野で24年10月の日中に起きた火災では、現役団員よりOB団員が早く到着。現役を退くとポンプ車などを扱う資格を失うため、遠くの消火栓からホースを伸ばすなど手間がかかったという。 大野分団OBの男性(68)は「昼間に地元にいない団員だけでは機動力に欠ける。私も消火を手伝うが…」と不安を語る。 京都府内の消防団員は減少が続き、24年4月現在1万5674人だ。