なぜ”令和の怪物”ロッテ佐々木朗希は”セ最強”阪神から憧れ甲子園でプロ初勝利をもぎとることができたのか?
94球のうち61球がストレートで最速は154キロだった。 立ち上がりから近本ー中野の1、2番コンビをストレートで押し込んだ。マルテにはストレートでカウントを整え最後はスライダーでスイングアウト。5つ奪った三振のうち3つは変化球だったが、2つは「原点球」と呼ばれる外角ストレートで、マルテ、梅野を見逃しの三振に。2回以降は、毎回、大量失点につながってもおかしくないピンチが続いたが、ギリギリのところで「あと1本」を許さずに踏ん張った。メンタルに裏付けされた粘りがあったのである。 一方で課題も浮き彫りになった。 高代氏は「配球面」を挙げ「2回の2失点は配球で防げた」と見る。 「佐藤に対して外角一辺倒で4球すべてがストレート。なぜインサイドを攻めず、落ちるボールを使わなかったのか」 2回無死一、三塁から、ドラ1怪物対決として注目された佐藤と対峙したが、カウント2-1から真ん中低めに投じた152キロのストレートをレフト前に弾き返されて1-1の同点とされた。全球ストレート。しかも、捕手はずっと外角にミットを構えていた。 佐藤は外角と低めのストレートは好きなコース。さらに無死一、二塁と続くピンチに、梅野、小幡を共にフォークで連続三振に斬って取った。二死として投手のアルカンタラを打席に迎えたが、ここでも全球ストレート勝負でライト前に勝ち越しのタイムリーを打たれた。高代氏は、「前の2人と同じようにフォークを落としておけば簡単に打ち取れている場面。配球で防げた勝ち越し点」と指摘した。 サンズには、2本のタイムリーを含む3安打を許したが、いずれも外角ストレートを痛打されたもの。「サンズは打席から離れて立つので外を攻めたくなるのかもしれないが、そこが最も得意のコース。バッテリーで頭を使えば、防げた可能性がある」と見ている。 ストレートの球速は、球数が80球を超える5回に入ると140キロ台に落ちていた。また変化球の制球力も不安定だった。 「球速が落ちると同時にシュート回転してしまっていた。ローテーで回っていくためには、スタミナ面も課題として残る。また変化球に精度がなかった。クセが出ていたのかもしれないが、ベース盤を外れ、しかも、ストライクゾーンから落とせていないので、簡単に見送られるシーンも目立った」 西武戦では5盗塁を許したが、まだセットポジションからのクイック投法を取得できておらず、この日も足で揺さぶられた。 3回には先頭の中野を四球で歩かせ盗塁を警戒。打者マルテを迎えた初球に牽制球を投げたが、これをレアードが後逸し、二進を許した。変化球がコントロールできず暴投となって三進させ、サンズのタイムリーにつながった。4回には一死から小幡に余裕で二盗された。失点にはつながらなかったが、佐々木の死角部分だ。 クイックの秒数は1.20秒台でとりわけ遅くはない。だが、高代氏は、「投球への予備動作がわかりやすいので完全にフォームを盗まれている。すり足(スライドステップ)もできていない。修正することで、本来の投球バランスが崩れることを心配しているのかもしれないが、簡単に直せることだ」と指摘した。