【12・28KO-D無差別級戦インタビュー】クリス・ブルックスが突く「ササキは過去に囚われている」説
みんなで前向きに一歩踏み出すことが 僕の考える「より良いプロレス界」
――病気が発覚したのが1年前でした。1年後にKO-D無差別級を持っている自分というのは想像していなかったかもしれませんが、これほどのマイナスをプラスに転化できたことについてはどう受け止めているのでしょう。 クリス 確かに、去年と比べると体調的にだいぶいいところにいるけど、それは治ったという話ではなくて、いつ再発するかわからないというのは今も常にあるんです。だから、定期健診を受けるたびに「再発しました」と言われるリスクは続いている。そういう中で1年前と決定的に違うのは「そういうこともあるよね」っていう心の持ち方で生きていられている。去年より、再発の可能性の不安にうまく対処できるようになって、心が安定している分、常に不安に苛まれて生きているのではなく今あるものを楽しもうっていうポジティブな考え方でいられる。そういう中で今回、ベルトを獲ったらタイトルも病気との向き合い方に似ているなと思いました。今、持ち得ているものがある日を境に失ってしまう…ベルトも、次は落とすかもしれない、あるいはケガをして返上してしまう可能性もあると、そんなことを考えると今のいい状態っていつまでも続かないのかもしれないと、常に心のどこかで思うようになる。その分、心の準備ができているのは今の自分と病気との関係と同じだなって。その中で大事なのは、気持ちの用意をすることで不安に囚われるのではなく、むしろ今ある楽しみと幸せをしっかりと享受しよう、何かが起きたら、その時はその時だ。心の準備だってできているのだからという安定感を持つことだと。そこが去年と一番違うところかな。今、一日一日を楽しもうとしているところに、ササキが入り込んできた。まあ、面倒くさい男だよ。 ――そうなると、初戴冠の時とはかなり気持ちが違っているでしょう。 クリス うん、前回はチャレンジする以前から肩の脱臼があって、いつ抜けてしまうかわからないという不安の中で防衛戦をやっていた。もちろん自分がかなえたい夢の最高到達点だったあのベルトが獲れたのは嬉しかったけど、そういう不安を持っていると自分がチャンピオンにふさわしいのかという迷いも生じてしまっていた。いつも自分が心がけていたのに、楽しむ、喜びを噛み締める時間がほとんどないまま手放してしまった。だから言われた通り、今はまったく違うメンタルでタイトルマッチに臨める。 ――KONOSUKE TAKESHITA選手にインタビューしたさい「自分も1度目の戴冠時は次から次へと迫りくる防衛戦のプレッシャーとの闘いで必死になっていて、2度目からチャンピオンとしての姿勢を見せられるようになった。クリスにもそれができると思うから、DDTを自分の考えるユートピアにしていってほしい」とエールを送っていました。 クリス アリガトゴザイマス。せっかくのエールも、両国で勝てなかったら実現できないんで、まずはしっかり勝ちます。ユートピアという言葉を僕なりに解釈するなら、僕はここからどう変えていきたいというより、むしろ今のままでいたい。なぜなら、今在るDDTが好きで僕はここにいるのだから。一時期、DDTがヘビーウェート路線にシフトして、ストロングの部分でアピールしていたけど、僕が好きなDDTはデカくて強いやつもいればハイフライも見られて、ゆるキャラもいてバカなことをやってとすべてがパッケージとしてバラエティーに存在しているものだと思っている。そこは変えたくないし、そのままでもそれぞれは進化していける。DDTを大きくしていきたいという思いから、今後もみんなで試行錯誤していくだろうし、ヘビー級ムーブメントもその過程の一つだったんだと思うよ。大切なのは何かを変えることよりも、今のDDTをより幅広く見てもらうこと。それが僕の夢だし、実際にウエノやMAOと飲むと出るのはそういう話ばかりなんだ。TAKESHITAとも昔は、そういう話をしたっけ。DDTが今より大きくなることがみんなの共通した夢なんだよ。ササキは去年、僕がチャンピオンになった時につまんなくなったって言っていたけど、会社としての業績は伸びたんだ。そうした事実があるから、僕にはこれでいいんだっていう手応えがあるし、ササキの言葉によってつまづくわけにはいかない。 ――この数年で大きなモチベーションとなっていたエル・デスペラード戦が7・21両国で形になりました。ここから先、同じように自分を突き動かすほどのモチベーションが持てるカードは頭の中にあるのでしょうか。 クリス やりたいことは一つではないよ。デスペラード戦はずっとやりたいって言っていたから実現したんだ。もっと言うなら、無理だと思ったから口に出して言えた。団体間の距離があったから気安く言えた部分もあったし、何回も何回も口にしなかったら実現していなかっただろうから、あの持って生き方で正解だったと思う。それに対し、これからやろうと思っていることは実現できるという予感がある。だから、それが確実なものになった段階で言うことにしている。いくつかある夢だけど、全部いけそうな気がしているんだ。 ――わかりました。最後に、週刊プロレスの「プロレスグランプリ」に向けて投票を呼びかける活動をしていますが、そこで「プロレス界をより良くするために」という公約を立てています。クリス選手が考えるより良いプロレス界を教えてください。 クリス より多くの人たちがDDTを見ることで、DDTの認知度や人気が上がれば、プロレス界全体がより良くなることにつながると思います。あとは、今よりも楽しいことをやるのに対してみんなで前向きになったり、不安にならず勇気を持って一歩踏み出したりするのも必要だと思っていて。今回、僕が踏み出した結果、ファンの人たちの反応もよかったし話題にもなっている点では「より良いプロレス界」にするというのはできていると僕は解釈している。 ――デスペラード戦実現にしても、今回の活動にしても、クリス選手は動こうと思い立ったら動けるタイプですよね。昔からそうだったんですか。 クリス 今、行動力という長所として言ってくれたけど、僕は我慢ができない性分として短所だと思っているんだ。もう、バカなことであればあるほどやりたくなってしまって、昔から自分を抑えることができなかったんです。自制心が効かない人間だねえ。 ――でも、それによって自分以外の人たちがポジティブになれるのだから、それでいいと思います。 クリス うん、だからグランプリを獲るという目標はもちろんあるけど、みんなの反応を見た時点で僕は、勝ち負けで言ったら勝ちだって思っています。
週刊プロレス編集部
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