【12・28KO-D無差別級戦インタビュー】クリス・ブルックスが突く「ササキは過去に囚われている」説
DDTは怒りを持たなくてもそれ以外の フィーリングでファイトが成り立つ
――とても俯瞰で見ていますね。 クリス 別に分析しようと思って見なくても、そういう印象になるよ。DAMNATIONって、解散の仕方が大々的じゃなかった。インパクトを残して華々しく散ったわけでもなく、次の日にはアルファベット2文字をくっつけて、しれっと同じようなことをやっていた。それに対し興味が湧いたのではなく、この面白いとは思えないことをなんでやっているんだろうと思ったら、ササキが過去に囚われているという結論に至った。まあ、彼は否定するだろうけどね。 ――佐々木選手に対し怒りの感情は持っていないと言われましたが、これまで怒りや憎しみといったネガティブな思いをプロレスに持ち込んだことはありましたか。 クリス DDTに来てからはないです。昔あったのは、怒りというよりも嫉妬の方だったと思う。俺たちの方が若くて勢いがあってイキもいいんだから、もっとこっちを見てくれよっていう感情は、イギリスでオリジナルSCHADENFREUDEをやっていた時に日本からやってきたサトムラ(里村明衣子)と対戦した時に抱いたのを憶えている。あの時は、今思うとネガティブな感情が自分を動かしていたと思う。でも、DDTでやっている今はそれを原動力にしてプロレスをやろうとは思わない。 ――それはプロレスをやる上でポジティブしか求めたくない、ネガティブな要素は持ち込みたくないというアティテュードによるものなんでしょうか。 クリス 意図的なものというより、年齢を重ねて成長した結果、怒りに身を任せても何も生み出さないと学んだのだと思う。自分が経験してきた中で、相手に対するリスペクトやポジティブな感情を持った方がいいものを生み出せてきたし、それによって怒りは幼い感情だと思うようになった。あの年になってもササキは僕に対する怒りに任せて言葉を発しているのだとしたら、まあ大人げないなと思うけど、自分は成長する過程の中でそういったものに身を任せるということがなくなった。 ――プロレスは喜怒哀楽を表現するジャンルだとよく言われます。その中の“怒”は必要ないと? クリス 怒りの感情がプロレスに必要ないとまで言うつもりはないよ。素直な感情で、それが湧いた人はそのまま包み隠すことなく表現すればいいと思う。ただ、そういう感情が湧き起こっていない人間が怒ったふりをするのは変だと思うし、僕の人生とプロレスにおいてないのであれば無理して作る必要などないものだから。以前も話したけど、僕は去年からの病気を経て、人間に与えられた時間は有限だということを痛感させられた。そんな限られた中で感じてもいない気持ちをわざわざまとうなんて時間がもったいない。僕はプロレスに対しずっとポジティブなものを求めてきたけど、あの経験によってその気持ちが強まったのは確かだ。怒りにワナワナ震えているうちに一日が終わっちゃったらムダにしたなあって後悔してしまうよ。今のDDTは、無理に怒りの感情を持たなくてもそれ以外のフィーリングでちゃんとファイトが成り立つ場所だから。 ――両国は、上野勇希選手のように闘うことで通じ合えるという結末にはおそらくならない相手だと思われます。王座を防衛することとは別次元で、クリス選手はどんな形を望みますか。 クリス ここは、ウエノだったらピュアでポジティブだから「佐々木さんに、プロレスへの愛に目覚めてほしい」と言うところだろうね。でも、ササキの場合は結果によって何かが変わるような人間ではないことがわかっているから、それは求めない。仮に、本当に仮の話だけど万が一そういう感情が芽生えたとしても絶対表には出さないから、両国の結果がどうなろうと佐々木大輔は佐々木大輔のままいくのだと思う。だから、ベルトを懸けて闘うことで彼との間に何かを生み出そうとは思っていなくて、自分のプロレスに対する愛、DDT愛を改めてオーディエンスに提示して、前に進んでいくしかないというのが今の時点で求めていることかな。 ――これが通常のシングルマッチなら新たなものを生み出せないと拒否できても、チャンピオンはたとえプラスを生み出す可能性が低い相手であっても挑戦を受けたからには闘う宿命にあります。 クリス そうだよね。挑戦したいって主張する権利はササキにもあるから、俺はウエノやMAOたちとしかやならいなんていうことは言えない。今の心境は、さっさと片づけて自分の進みたいチャンピオンロードに早く戻りたい、だね。 ――理想の方向へ進むためのクリアすべき一戦。 クリス そう。たとえばウエノとのタイトルマッチだったら、どちらが勝ってもDDTをよりハッピーな方向に進められるという共通部分があって、ファンもハッピーになれると思うんだ。でも、なぜだかわからないけどササキとDAMNATIONにも一定のファンがいて、彼ら彼女たちはササキに勝ってほしいと願う。そこが今まで僕の経験した無差別級戦とは違うカラーだと思う。これまでの、どっちが勝ってもポジティブに終わるものではなく、ハッキリと見る側の対立構図が分かれている。それはドラマティック・チームの中では意外と新鮮なのかもしれない。 ――確かに興味深いですし、わかりやすいシチュエーションでもあります。同時に、これまでポジティブなものを求めてきたクリス選手がそれとは違う形になる可能性を含んだシチュエーションに臨むのもレアケースだなと。 クリス ソノトオリデスネー。
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