【名馬列伝】牝馬最多GⅠ勝利を更新した”メジロ血統の結晶”メジロドーベル。師匠の𠮟咤激励に応えた吉田豊と人馬の成長物語
夏の休養を経て、陣営がステップレースに選んだのは古馬牡馬を相手にするオールカマー(GⅡ、中山・芝2200m)。驚くような選択だったが、目標とする秋華賞(GⅠ、京都・芝2000m)までのレース間隔を考慮したものとされ、メジロドーベルは序盤に鞍上との折り合いを欠いたが、先頭に立たせると落ち着きを取り戻す。そしてそのまま脚を伸ばすと、古馬牡馬を下して逃げ切ってしまったのだから、そのポテンシャルにあらためて驚いたファンは多かった。 そして迎えた秋華賞。単勝オッズ1.7倍の1番人気に推されたメジロドーベルは、逃げるキョウエイマーチを直線半ば過ぎで捉えると、ゴールでは2馬身半差をつけて完勝。中距離以上では同世代の牝馬に敵なしを印象付けたのだった。 メジロドーベルはその後も大きな怪我もなくタフに走り続け、1998年のエリザベス女王杯(GⅠ、京都・芝2200m)ではエアグルーヴを3着に下して快勝すると、引退レースとなった翌99年のエリザベス女王杯でも、人気のファレノプシスらを退けて連覇を達成。これで制覇したGⅠレースの数が「5」となり、当時の牝馬最多勝記録を更新。メジロ牧場の北野俊雄は「これでメジロラモーヌを超えたと思います」と感慨深げに語った。 功成り名を遂げたメジロドーベルは11月末に東京競馬場でオークス制覇時のゼッケン「16」を付けて引退式を挙行。生まれ故郷のメジロ牧場へと帰った。 残念なことに繁殖牝馬として活躍馬は出せなかったが、30歳になったいまも長寿を誇り、メジロ牧場の後継牧場となったレイクヴィラファームで悠々自適の生活を送っているという。 文●三好達彦
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