清原和博「ドラフトのことを謝罪してください」遅刻してきた巨人側は笑った「キミが来るなら、落合博満を切るんだよ」…FA移籍「落合vs清原」騒動
40歳での鮮烈なFA宣言、巨人へ電撃移籍した落合博満……1993年12月のことだった。 あれから30年。巨人にとって落合博満がいた3年間とは何だったのか? 当時を徹底検証する書籍「巨人軍vs.落合博満」が発売され、即重版と売れ行き好調だ。 その書籍のなかから、「落合博満vs.清原和博“FA移籍騒動”」を紹介する。清原和博を巡る移籍のゴタゴタ……しかし当初、落合は残留するつもりだった。【全3回の前編/中編、後編も公開中】 【貴重写真】見たことある?「幻のヤクルト落合博満」ノムさんと入団交渉する落合博満、巨人フロントにキレる落合&20代落合のカッコイイ発掘写真まですべて見る(30枚超) ◆◆◆
落合は巨人に残留するつもりだった
「西武と決裂したら、ウチは何が何でも清原を獲るべきだね。オレだってそう長くはないし、では後の四番を考えたら清原しかいない。ここ何年間か打てないけど、オレから見ると原因がはっきりしている。それを直すのは、そんなに難しいことではない。オレはキヨを本来の姿にする自信がある」(週刊ベースボール1996年12月23日号) 西武の清原がFA宣言した6日後の1996年11月2日、落合は10年来の師弟関係にある清原について、自分の手で再生してみせると口にした。落合自身は、翌年もチームに残留することをシーズン中に読売新聞社の渡邉社長や長嶋監督とのやり取りで確認しており、本人も当然そのつもりでいた。 12月9日で43歳になる落合の1996年シーズンは、8月末に死球による左手小指中手骨の亀裂骨折で離脱するまで、打率・301、21本塁打、86打点、得点圏打率.345という堂々たる打撃成績を残し、長嶋巨人の“メークドラマ”に大きく貢献した。対する29歳の清原は西武11年目で、31本塁打を放ち、自身4年ぶりの30発をクリアするも、得点圏打率.248とここ一番での勝負弱さを度々指摘される。その課題も、「オレがいつも近いところで見ていれば、いろんなことをアドバイスできるだろう」と落合は考えていたのだ。
「娘を嫁にやる父親の気持ちだったよ」
そして、周囲も「巨人・清原」の誕生に向けて交渉解禁前にもかかわらず、フライング気味に後押しする。日本テレビ社長の氏家斉一郎は、ミスターレオの去就について、FA宣言の翌日に獲得容認とも受け取れるコメントを残した。 「当人の意志を無視してはいけない。親の都合で子供の結婚を認めないというのはまずい。嫁に来たがっている者を親が反対できないだろう」(週刊文春1996年11月7日号) すでに巨人入団は決定的という雰囲気の中で、プロ野球コンベンションと日米野球レセプションが行われた10月31日、清原は西武関係者と交渉を行い、「外で勝負したい。ドラフトのクジで人生を決められ、自分なりに精いっぱいやってきた。今度は自分が決めた道で勝負したい」とついに他球団移籍の決断を伝える。兄貴分の東尾修監督も、「彼にとっては巨人がやっぱり初恋や夢のようなものなんだ」と理解を示した。 「若いミュージシャンが、『いつかは武道館でコンサートをしたい』というような夢を語ることがある。僕がジャイアンツで野球をやりたいという夢は、つまりその武道館コンサートにも似たものだった。ジャイアンツの選手として活躍すること。それがジャイアンツの試合をテレビで観ながら、祖父に『日本一の男になれ』と言われて育った僕の夢だった」(男道/清原和博/幻冬舎) 黄金時代の西武で四番を張り、11年間で8度のリーグ優勝と6度の日本一に輝いたが、FA権を取得すると、一度は蓋をした少年時代の夢が蘇ってきた。背番号3は11月4日に西武球場で行われた日米野球第4戦に出場。スタンドでは「いつまでも西武の清原でいてくれ」「永遠のミスターライオンズ清原和博」といったファンの横断幕が掲げられたが、試合後に本人は「西武のユニフォームを着てここでやるのは最後になるでしょう」とあらためて移籍の意思を口にする。 11月10日に日米野球の全日程が終了した翌11日、清原は入団時から何かと自分を気にかけてくれた西武の堤義明オーナーのもとを訪れ、退団の挨拶。堤オーナーはのちに「娘を嫁にやる父親のような気持ちだったよ」とミスターレオを失った喪失感を振り返っている。
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