【名馬列伝】牝馬最多GⅠ勝利を更新した”メジロ血統の結晶”メジロドーベル。師匠の𠮟咤激励に応えた吉田豊と人馬の成長物語
デビューは2歳の7月、新潟の新馬戦(芝1000m)。道中は3~4番手を進んだメジロドーベルは直線で素晴らしい瞬発力を見せて、スプリント戦ながら2着に3馬身差をつけて快勝する。続く新潟3歳ステークス(GⅢ、新潟・芝1200m/現・新潟2歳ステークス)は進路が詰まったこともあって5着に敗れるが、その後のサフラン賞(500万下、東京・芝1400m)、いちょうステークス(OP、東京・芝1600m)はともに先行・差し切りの強い競馬で圧勝。一気に牝馬戦線のトップクラスに加わっていく。 シーズンの締め括りに選んだのは2歳女王決定戦の阪神3歳牝馬ステークス(GⅠ、阪神・芝1600m/現・阪神ジュベナイルフィリーズ)。圧倒的1番人気の外国産馬シーキングザパールに次ぐ支持を得たメジロドーベルは、先団の5番手を追走。第3コーナーから位置を押し上げると直線で末脚が爆発。一気に馬群を突き抜けると、追いすがるシーズプリンセスを2馬身退けて先頭でゴール。自身はもちろんのこと、大久保洋吉に初のGⅠタイトルをもたらし、吉田豊には重賞初制覇をGⅠで挙げる快挙を達成した。そしてこの勝利によって、1996年度のJRA賞最優秀2歳牝馬に選出された。 クラシック候補の一角として迎えた1997年。メジロドーベルは初戦のチューリップ賞(GⅢ、阪神・芝1600m)では道中折り合いを欠いて3着に敗退。続く1冠目の桜花賞(GⅠ、阪神・芝1600m)は不良馬場となり、快速馬キョウエイマーチに次ぐ2番人気に推された。そしてレースでは、距離のロスなくインコースから先行・差しの競馬で先頭に躍り出たキョウエイマーチに対し、第3コーナーから馬群の外を回って追い込んだメジロドーベルの追い込みははるか及ばず、4馬身差の2着に敗れた。 しかし、距離が一気に800mも延びるオークス(GⅠ、東京・芝2400m)となると、血統的に距離延長に不安がないメジロドーベルは黙っていなかった。1番人気となったキョウエイマーチが逃げるのを他所に、2歳女王は中団の後ろ目の12番手を追走。最終コーナーを回りながら位置を押し上げると、直線へ向いて伝家の宝刀たる末脚がまたも爆発。バテたキョウエイマーチを瞬時に交わして先頭に立つと、人気薄ながら2着に上がってきたナナヨーウイングに2馬身半差という決定的な差を付けて堂々と”樫の女王”に輝いたのだった。
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