「アルプス」に観客戻る 制限ある中、応援工夫 選抜高校野球
「春はセンバツから」。19日に阪神甲子園球場(兵庫県西宮市)で開幕した第93回選抜高校野球大会(毎日新聞社など主催)。選手宣誓で仙台育英(宮城)の島貫丞主将(3年)が願ったように晴天の下、心地よい風が甲子園に吹いた。アルプススタンドには2年ぶりに観客が戻ってきて、新型コロナウイルス感染防止策で観客席の間隔を空けるなどさまざまな制限がある中、応援の仕方に工夫を凝らしてグラウンドの選手たちを後押しした。 【選手宣誓をする仙台育英の島貫丞主将】 例年ならブラスバンドの演奏に合わせて応援できるが、新型コロナ感染予防のため今回は禁止。太鼓は許可され、CDに録音されたブラスバンドの音源に合わせてメガホンをたたいたり、手拍子したりした。 開幕試合の神戸国際大付(兵庫)―北海(北海道)戦は、好対照の応援スタイルとなった。事前に応援の実施方法を選択できる。出場校が自校ブラスバンド部員の演奏をCDに録音▽主催者が尼崎市立尼崎高吹奏楽部の協力を得て録音したCD▽ブラスバンドの音源を使わず手拍子のみで応援――の三つ。 神戸国際大付は、ブラスバンド部員が4人しかおらず啓明学院(神戸市)のブラスバンドと一緒に演奏したCDを使用した。打順番号の奇数はCDを、偶数は手拍子でリズムを作ることにした。実はCDの使用許可が出る前に一般生徒と野球部員が手拍子応援の練習をしてまとまりが良かったので本番でも導入。太鼓をたたいて音頭を取った部員の高橋綺兜さん(3年)は普段使わない筋肉を使い腕がパンパンになったといい、「練習で一般の生徒は積極的に応援してくれないかなと思ったが、部員より大きな手拍子をしてくれる人もいた。僕たちの太鼓で周りの人を巻き込み、全員で勝ちたい」と意気込んだ。 一方、北海は、応援でCDを使えることを知った時にはすでに関西入りしており、市立尼崎高吹奏楽部の音源を使用した。選曲を知ったのは2日前の17日で、太鼓をたたいた部員の酒井智輝さん(3年)はユーチューブで曲を確認しながら指でリズムを取って練習。ぶっつけ本番で「正直不安はあるが、地方大会では手拍子しかできなかったので新型コロナを吹き飛ばすような勢いのある太鼓をたたきたい」と話した。 北海は創部120年。1963年の選抜大会準優勝時の復刻版ユニホームで試合をした。OB会長の大谷喜一さん(69)は「昨年の生徒たちは残念だったけど、出場できるだけで幸せだよね」とグラウンドにまなざしを向けた。【隈元悠太、荻野公一】