全国各地で目撃情報多数、出没警報も発令中! 死んだふりは NG!! クマに遭遇しても生き延びる本当の方法
■クマ被害が増えている理由は何? そもそも、ここ数年でなぜこんなにもクマ被害のニュースが増えているのでしょうか? 人が森林伐採をしすぎて山にエサがなくなったことなどが関係していますか? 「エサ不足は確かに大きな理由です。ただ、人のせいでエサが少なくなったというより、自然のサイクルの一環でエサが少ない年があることのほうがエサ不足には影響しています。クマ被害が過去最大だった昨年度は偶然、何種ものエサが数年に1度の凶作の年で、クマが食べるものが極端に少なかったんです。 また、森林伐採に関していうと、人が森林を伐採して動物の居場所を奪ったという一般的な理解に反して、実は今の日本では森林がどんどん拡張して動物の生息域が広がっているんです。今、日本の木は頑張って切っても高値で売れないので、林業は昔と比べて衰退しています。 また、森林の近くにある集落は住民が高齢化した影響でどんどん少なくなって、人は森の近くから撤退しているといえます。そのため昔は集落があって人が住んでいた場所も草木が刈られないまま森の一部となってしまい、動物たちの居場所になっています。 そしてここで問題となるのが、人が森林から立ちのいていることで、『バッファゾーン』(緩衝地帯)がなくなっていることです。 『バッファゾーン』とはクマやイノシシがすむ森と、人が住む住宅地に挟まれた場所で、人間によって草木が刈られて手入れされているけれども完全に住宅地ではない、いわば中間地帯のような場所です。 これがないと人が住宅地を出て森に入るとすぐにクマなどの野生動物の生息地に入ってしまうことになり、遭遇のリスクが格段に上がってしまいます。 このようなリスクを減らすため、『バッファゾーン』を設けて人間と動物のすみかをしっかり分けて両者を『ゾーニング』(すみ分け)していくことが根本的なクマ被害の対策につながります。 ただ、この『バッファゾーン』をつくるのはすでに高齢化が進んでいる集落の人たちには難しいので、行政が積極的に関わって支援する必要があります。 クマの研究者としては被害が拡大するたびにクマを駆除する対症療法より、『バッファゾーン』を設けてそもそも人間とクマが遭遇するリスクを減らす原因療法のほうが有意義だと考えています」 クマからしても、猟銃を持ったハンターから生き延びるのは至難の業。両者がすみ分けできる環境をつくることで、お互いにウィンウィンな関係を築くことができそうです。 イラスト/福田嗣朗