188億円で落札! 日本でも展示されたマグリットの傑作がシュルレアリスム作品の最高額を更新
ニューヨークのクリスティーズで11月19日に行われたイブニングセール「MICA: THE COLLECTION OF MICA ERTEGUN Part I」の目玉作品として、ルネ・マグリットの「光の帝国」シリーズの1点が出品された。 1億ドル(約150億円)超えのアート作品6選 「光の帝国」はマグリットが1949年から64年にかけて取り組んだ代表的なシリーズで、夜の景色の上には青空というシュールな情景を描いている。この作品は1954年のもので、昨年97歳で亡くなったインテリアデザイナーでアートコレクターのミカ・エルテュンが所有していた。アートネットによると、エルテュンは同作を1968年に購入。日本をはじめ、フランス、スイス、オーストリア、カナダなど世界各地で開催された展覧会に貸し出していた。 マグリットは「光の帝国」を油彩で17点制作した。さまざまなシュールレアリスムのアーティストを扱ってきたニューヨークの美術商、エマニュエル・ディ・ドナは今回出品された作品について、「シリーズの中でも最高傑作であると言って過言ではありません」と評価する。現に、2011年に開催した自身のギャラリーのオープング展のカタログ表紙にはエルテュンの「光の帝国」を使っている。
そのようなエルテュンの「光の帝国」は、11月19日に行われたイブニングセールのハイライトとなった。入札は7500万ドル(約115億円)から始まり、動きが鈍ったかと思うと、わずか数分で1億ドルに上昇。 クリスティーズのスタッフであるアレックス・ロッターとシン・リー・コーエンを介する2人の電話入札者による競り合いになった。その間、会場は水を打ったような静けさだった。開始からおよそ10分後、リー・コーエンのクライアントが辞退する形でハンマーが下ろされ、その瞬間会場は拍手に包まれた。落札価格は、予想価格の9500万ドル(約146億4000万円)を上回る手数料込み1億2120万ドル(約188億円)となり、マグリットのみならずシュルレアリスム作品の最高価格を更新した。 奇しくも「光の帝国」のもう1作が、同日続いて行われた「20th Century Evening Sale」に出品されており、こちらをリー・コーエンのクライアントが1880万ドル(約28億9000万円)で落札した。
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