お茶の水女子大がトランスジェンダー学生受け入れへ(全文1)2020年度から
受け入れ決定に至った経緯と理由について
次に、受け入れ決定に至りました経緯と理由についてご説明させていただきます。本学では社会からの要請や、当事者と見られる方々からのお問い合わせがあったことなどから、2016年より、トランスジェンダーの受け入れに関して検討を始めました。そして、2017年7月に本格的にワーキンググループを設置いたしまして、検討を重ねてまいりました。その間、先ほどの資料にもありましたように、2017年9月には日本学術会議から、性自認が女性の方が女子大学で学ぶ権利についての提言もなされました。また、海外では2014年に米国の名門女子大学であるミルズ大学、マウント・ホリヨーク大学が、また2015年に入ってからは、ブリンマー大学、ウェルズリー大学、バーナード大学、スミス大学が入学を希望する受験生を対象に、女性であるという自己認識を持つトランスジェンダーの人々を含めるという決定をして、トランスジェンダー学生を受け入れております。 お茶の水女子大学は142年を超える歴史の中で、卓越した女性研究者、女性教育者、そしてさまざまな社会の分野で活躍する優れた女性たちを育て、社会へと送り出してまいりました。女性が活躍できる場の拡大につきましては、はるか以前の社会と比べますと格段に進歩しておりますけれども、それでもまだ、さまざまな場で女性が職業人として活躍することに困難があることは、皆さまもよくご承知のことと思います。 その現状を変え、女性たちが差別や偏見を受けずに幸せに暮らせる社会をつくるためには、大学という学びの場で女性たちが自らの価値を認識し、社会に貢献するという確信を持って前進する精神を育む、そういった必要があるというふうに考えております。そして、それが実現できるのは、女性が旧来の役割意識などの無意識の偏見、最近はアンコンシャス・バイアスという言葉が使われておりますけれども、そういったものから解放されて、自由に活躍できる女子大学であろうというふうに考えております。本学は「学ぶ意欲のあるすべての女性にとって、 真摯な夢の実現の場として存在する」というミッションを掲げて、全ての女性たちが、その年齢や国籍等に関わりなく、個々人の尊厳と権利を保障されて、自身の学びを進化させ、自由に自己の資質、能力を開発させることを目指しています。その意味からも、性自認が女性であって、真摯に女子大学で学ぶことを希望する人を受け入れることは、自然の流れであろうと思いますし、またこれからの多様性を包摂する社会への対応としても当然のことと考えました。 そこで、2018年4月にトランスジェンダーを受け入れる方針を学内の会議に提示いたしまして、その後、教職員、学生、同窓会、保護者代表によって構成される講演会、経営協議会等に対しまして、説明会や意見交換会等を開催して合意形成を進めてまいりました。最終的に6月26日の役員会で、トランスジェンダー学生の2020年度からの受け入れを決定いたしました。皆さまもご存じのように、社会のさまざまの分野での性的マイノリティー、LGBTの方々の差別を解消する施策や取り組みが進み、心の性、多様な性が認められる方向に世の中が転換しております。そういった多様な価値と人々が交錯する社会に出ていく、これからの学生たちにとりまして、お茶の水女子大学が真摯に学びを求める全ての女性に門戸を開き、その成長を支援する環境を構築することが強い力になるというふうにも考えました。 本学では、先ほど読み上げさせていただきました文章にありますように、今回の決定を、多様性を包摂する女子大学と社会の創出に向けた取り組みというふうに位置付けておりまして、今後こういった動きが、多様な女性があらゆる分野に参画できる社会の実現につながっていくことを期待しております。 【連載】お茶の水女子大がトランスジェンダー学生受け入れへ 全文2へ続く