医師が教える「理想の睡眠時間」あなたは寝不足? それとも寝すぎ? 1日8時間説の真実
私たちは、1日のおよそ3分の1を眠って過ごしています。これほどまで長い睡眠時間が必要なのは、睡眠には健康を維持する重要な役割があるからです。しかし、「寝たいけれど思うように眠れない」「深く眠れたなという感じがしない」「日中の眠気がひどい」など、睡眠に関する悩みを持っている人は多いのではないでしょうか。現在、「一般成人の30%程度が不眠に関する悩みを持っている」と言われています。体内時計のリズムの乱れ、持病の影響、ストレスや悩みごとなど、不眠の原因は人によって異なります。この記事では、少しでも不眠の解消や睡眠の質や量を高める一助となれるよう、理想の睡眠時間や睡眠の質を上げるコツなどについて、医師の村上先生に解説していただきました。 [この記事は、Medical DOC医療アドバイザーにより医療情報の信憑性について確認後に公開しております]
理想の睡眠時間は何時間? 「1日8時間」はホント? 年齢や生まれつきの個人差は関係ある?
編集部: 「1日8時間は寝るようにしましょう」という話をよく耳にします。それはなぜですか? 村上先生: 成人の場合、1日7~9時間の睡眠時間の確保が推奨されており、その平均をとって8時間というのが1つの目安になっているのだと思います。ただし、個人によって必要な睡眠時間は異なるので、「8時間はあくまで目安」という位置付けでいいと考えます。 編集部: では、理想の睡眠時間はあるのでしょうか? 村上先生: はい、あります。年代ごとに推奨される時間が決まっています。なお、日本人の睡眠時間は平均で7時間20~40分程度であり、先進国の中でとても短いと言われています。また、平均睡眠時間は年々短くなる傾向がみられ、多くの日本人にとって睡眠による悩みは身近なものになっていると言われています。 編集部: 具体的な理想の睡眠時間を年齢別に教えてください。 村上先生: 「National Sleep Foundation」が推奨する年齢別の睡眠時間は、以下のとおりです。 0~3カ月:14~17時間 4~11カ月:12~15時間 1~2歳:11~14時間 3~5歳:10~13時間 6~13歳:9~11時間 14~17歳:8~10時間 18~64歳:7~9時間 65歳以上:7~8時間 編集部: でも、必ずしも全ての人にとって最適な睡眠時間ではないですよね? 村上先生: たしかに、推奨される必要な睡眠時間はありますが、実際には個人差があります。1日5~6時間で済む人もいれば、8時間でも足りないという人もいます。自分の睡眠状況を確認するためには、「睡眠日誌」をつけてみましょう。2週間分の睡眠時間を記録して、平日と休日で差があるかどうか見比べてください。もし、平日と休日の睡眠時間に差がなければ最適な睡眠時間と言えますし、休日に2時間以上多く寝ている場合には、「睡眠負債(慢性的な睡眠不足)」の存在が疑われるため、必要な睡眠時間を改めて探る必要があります。 編集部: ロングスリーパーやショートスリーパーの人もいると思いますが、健康に影響はないのでしょうか? 村上先生: ロングスリーパー(長時間睡眠者)とは、長時間眠る必要がある人のことです。成人の場合では10時間以上、子どもの場合には同世代の基準値より2時間以上長く眠ると言われています。長時間寝ること自体は病気ではなく、その人の体質や特徴と言えるものです。ロングスリーパーは、必要な睡眠時間をとっていれば日中の活動に支障はなく、健康に問題はないと考えられています。一方で、ショートスリーパー(短時間睡眠者)とは、短時間の睡眠をとるだけで、日中の活動に支障なく過ごすことができる人のことです。6時間未満の睡眠で昼間の眠気もなく、健康状態に問題がない状態を指します。ショートスリーパーは精力的に活動することが得意な場合もあるため、憧れの対象かもしれません。ただし、これも体質的な要因が関係していると言われています。無理に睡眠時間を短くすることは、体調を崩す可能性もあるため、注意しましょう。いずれにしても、自分にとって必要な睡眠時間を知ることが重要です。