中日初勝利の裏に予測不能な与田新監督の勝負師一面
“与田竜”が今季初勝利をつかんだ。30日、横浜スタジアムで横浜DeNA対中日の開幕第2戦が行われ、40歳の山井と20歳の京山の“20歳の年の差対決”となったが、中日打線が14安打9得点と大爆発。山井を援護して、開幕戦での「1-8」の屈辱スコアを1点上回る「9-1」でやり返した。与田監督は山井へのバスター指令や、異例のバントシフト、代打・福田の的中など、次から次へと予測不能な勝負手を展開させチームを活性化した。与田流のチーム再建のための意識革命がチームに浸透しつつある。
勝負師采配
ベンチ前で選手を迎える勝利儀式で勝利投手の山井が、与田監督に監督1勝目のウイニングボールを手渡した。 与田監督は、そのボールを手にカメラマンのリクエストに答えたが、そのボールをどうするのか?と聞かれ、「山井の今季初勝利のボールを奪ってしまった。心の中に留め棺桶まで持って入りますよ」と、冗談を交えて笑った。 ストッパーとして活躍した現役時代に背負った「29」を今、引き継いでいる山井から初勝利をプレゼントされるのも不思議な系譜。 「あ?そうか。いろんな物語があるねえ。ありがたいボール。今後、もっともらえるようにしたいねえ」 監督初勝利の次の“ありがたいボール”は優勝のボールしかない。 第2戦の先発に指名したのはベテランの山井だった。キャンプでは最初のクールからブルペンに入り率先して投げ込んできた。昨年の終盤にローテーを支えた若手が故障で開幕に間に合わない中、40歳の山井と34歳の吉見がテーマをもって迫りくる限界に反抗し続けてきた姿を与田監督はずっと見ていた。 「真っすぐがよかった。(捕手の)大野もね。ちょこちょこと曲げ球を多くするんじゃなくて、真っすぐ中心(の配球で)やってくれた」 その立ち上がりに二死一塁から昨夜のヒーロー、筒香を迎えたが、140キロ台のツーシームを使い、スイングアウト。その後もストレートを動かしながら打者のバットの芯を外していく。 待望の先制点は3回だった。 与田監督は、ここで勝負師の一面を見せた。 大野が四球で歩き無死一塁で山井の打席で動いた。なんと初球にバスターのサイン。空振りに終わったが、2球目も続けてバスターを仕掛けた。これもファウルになり、結局、スリーバントのサインに切り替わったが、それを山井がきっちりと決めて先制舞台をお膳立てした。前日は無死一、二塁の先制機に笠原はスリーバントに失敗していた。 「山井は、野手の動きを見てうまく対応できる選手。ツーストライクからよく(バントを)決めてくれた」 与田監督は、この場面をこう振り返る。 100%バントの場面でなかなかの勝負手。 「四球でもらった走者を簡単にバントでアウトをやるのもばからしい。山井はいろいろできますから」 そのベンチの采配と、それに応えた山井の執念が、続く平田のバットに乗り移る。 「(山井の)勝ちたいという気持ちがマウンドからも打席からも伝わってきた。その気持ちが乗り移った」 うまく打席内でスタンスを変えてレフト線に先制のタイムリー二塁打である。