中日初勝利の裏に予測不能な与田新監督の勝負師一面
なぜ京田を外したのか
昨年の秋に監督就任後、取り組んでいることが、選手の意識革命だ。自信を取り戻させることにコミットメントし、そのために首脳陣との信頼を築くことを考えた。 だから与田監督は「打たれてもいい。三振してもいい」と言う。 「いつまでもというわけではない。でも今は意識を変えているところ。公式戦に入った途端に監督が言うこと違っているじゃん?では、疑心暗鬼になりますよ」 ピッチャーには、3ボールにするなら2ボールから「バットを振らせろ」と口を酸っぱく言っている。 「ファウルになって空振りになれば、ツーツーというカウントになって余裕が出る。でもコースを狙ってボールになって3ボールになると大胆に勝負できなくなる」 いわゆるストライクゾーンでの勝負論。逃げるなら「打たれてもいい」のである。 バッターにも中途半端なバッティングにまとまらず「振れ」と言っている。 「三振してもいい」のである。 開幕スタメンには、新人王で2年連続で不動のショートだった京田を外して堂上を使った。根尾とのショートのレギュラー争いに闘志を燃やしていた京田が、そのゴールデンルーキーでなく、プロ13年目の堂上に敗れた。 その真意を聞く。 「オープン戦での結果でなく力がある選手、準備のできている選手を使ったということ」 ――報道ではオープン戦での京田の無気力プレーに「与田監督が激怒」と出ていた。あの話が関連しているのか。 「激怒なんかしていないし怒鳴ってもいません。ただやるべきことができていなかった。集中力に欠いていたんです。例えばカットマンの仕事も果たせていませんでした。立ち振る舞いも含めてヨーイドンでドラゴンズの開幕メンバーにふさわしい9人を選んだだけ。2年間出たからと言ってレギュラーじゃない。まだ3年目の選手。彼のためにも、ここで勘違いしてもらったら困るんです」 それが与田の流儀。誰一人、特別扱いはせずに、全力でプレーしている力のある選手を実績に囚われることなく最優先に使うという“タブー無き原則”である。堂上はこの日2安打1打点と結果を出した。 正しい競争力が生まれたチームは強くなる。6年連続Bクラスのチームを変えるには、1本筋の通ったチーム方針が必要になってくる。 「でも、こういうゲームの中で京田はしっかりと入っていってくれた。1本ヒットも出た。ああいう姿を見せてくれるのは嬉しいね」 与田監督の話は、いつもポジティブに完結する。それもまた与田監督が、中日を明るく変えつつある理由の一つだろう。 「まだひとつ勝っただけですよ。これからです」 ひとつ勝ち越して名古屋へ帰りたい。6年間負けているチームに開幕ダッシュは不可欠である。第3戦の先発に与田監督は3年目の右腕、柳を指名した。 (文責・本郷陽一/論スポ、スポーツタイムズ通信社)