重症花粉症にも高い効果期待―抗体医薬の特徴と投与までの道筋
◇希望者は1月中の初診が目安
「毎年、ひどい花粉症に悩まされているので、オマリズマブを試してみたい」という方もいるかもしれないが、投与までにはある程度時間がかかる。 「初めて、あるいは前シーズンに投与を受けていない場合、最低3回の受診が必要です。また、初診から投与までは原則として1カ月以上かかると考えてください」と天野氏。 投与までには 1.血液検査で血中IgE濃度と、スギ花粉がアレルゲンであるかを検査 2.従来の抗ヒスタミン薬などの効果を確認 3.条件を満たした場合、オマリズマブ投与(注射) ――という段階を経ることが必要という。血液検査の結果が出るまで1週間程度、抗ヒスタミン薬などの効果確認に1カ月程度かかる。花粉の飛散が始まらないと従来の薬の効果が確認できないため、目安としては1月中旬に初診、オマリズマブの最初の投与が見込めるのは3月ごろになる。 高い効果が期待できるが、ネックは薬価が高いことだ。オマリズマブは「バイオ医薬品」の一種。主に化学合成される従来薬とは製造工程が異なり、現状ではオマリズマブに限らずバイオ医薬品は全般に薬価が高くなっている。 オマリズマブは血中IgE濃度と体重によって投与量と投与間隔が決まる。投与間隔は2週間ごと、または4週間ごと。薬剤費の自己負担額は3割負担の場合で1カ月あたり約4500~7万円となる。 「ほとんどの方は1回あたりの薬剤費自己負担額が約9000~1万7500円、4週間に1度投与の範囲に収まります。初診から検査を経て3月初めに1回目、4週間後にもう1回の投与で、ゴールデンウイークのころまで効果が続くことが見込まれます。1シーズンの薬剤費自己負担額のめどは約2万~3万5000円になります。花粉症のつらさから解放され、通常どおりのパフォーマンスが出せるなら、これぐらいの負担は問題ないという患者さんも多くいます」と天野氏は説明する。 花粉症の社会・経済的な損失は甚大だ。ニッセイ基礎研究所が2021年3月に実施した「被用者の働き方と健康に関する調査」で「花粉症の症状があるときの仕事の効率は、症状がない時と比べて平均63%程度」との結果が出ている。また、パフォーマンスの低下によって1日あたり2215億円の経済損失が生じるとの試算をパナソニックが2020年に公表した。政府はこうした社会問題解決のため、2023年4月から「花粉症に関する関係閣僚会議」を開催し、花粉症対策初期集中対応パッケージを策定するなど、国を挙げて対策に取り組んでいる。