とても、ヒトと同じ霊長類には見えない…わずか数個しか発見されていない化石から復元した「限りなく霊長類に近い」動物の「衝撃の姿」
長い長い進化の中で、私たちの祖先は、何を得て、何を失い、何と別れてきたのかーー 約46億年と言われる地球の歴史において、生命が誕生は、遅くとも約39億5000万年前と言われています。そして、最初の人類が登場するのは、約700万年前。長い地球の歴史から見れば、“ごく最近”です。 【画像】今も決着がつかない「人類祖先のミッシングリンク」…大議論を起こした化石 しかし、そのホモ・サピエンスも、突如として誕生したわけではありません。初期生命から現在へと連綿と続く進化の果てに、生まれたのです。私たち「ホモ・サピエンス」という一つの種に絞って、その歴史をたどってみたら、どのような道程が見えてくるでしょうか。そんな道のりを、【70の道標(みちしるべ)】に注目して紡いだ、壮大な物語がです。 この『サピエンス前史』から、70の道標から、とくに注目したい「読みどころ」をご紹介していきましょう。今回から、霊長類の誕生を見ていきましょう。 *本記事は、『サピエンス前史 脊椎動物から人類に至る5億年の物語』(ブルーバックス)を再構成・再編集したものです。
霊長類の物語が始まる
いよいよ、“ヒトに至る系譜”の本流中の本流、真主獣類の1グループとして登場した霊長類の物語に入るとしよう。 知られている限り最も古い霊長類の化石は、アメリカのモンタナ州に分布する暁新世初頭の地層から発見されている。その化石の年代は、約6590万~約6586万年前である。そう、「約6586万年前」である。白亜紀末の大量絶滅事件から15万年も経過していない。古い方の数字が正しければ、10万年ほどだ。 これまで見てきたように、我らが霊長類が登場するまでには、真獣類の多くのグループとの分岐が必要だ。その分岐は、遅くても約6586万年前までに終えていたのである。モンタナ州の化石は、真獣類の多様化・進化が、いかに短期間で行われていたのかを物語る。こうした事実は、同時に、白亜紀にすでに多様化が進んでいた可能性を内包している。 2021年にワシントン大学(アメリカ)のグレゴリー・P・ウィルソン・マンティラたちが報告したその化石は、「プルガトリウス(Purgatorius)」のものだ。 この化石は、長さ数センチメートルほどの下顎と、数ミリメートルサイズの歯の化石だけという部分的なものだった。プルガトリウスは、この標本だけではなく、2021年以前にもいくつかの化石がアメリカとカナダに分布する暁新世初頭の地層から発見されている。 しかし、いずれも歯と顎の化石だけであり、プルガトリウスの姿自体は復元できていない。いっぽう、そうした化石から、大きさについてはおそらく小ネズミ級であったとみられている。 姿はわからなくとも、分類はできる。プルガトリウスは、霊長類の中でも「プレシアダピス類」と呼ばれるグループに分類された。
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