九死に一生を得た漫画家、後遺症で手は震え…支えになった亡き夫の「ひと言」とは?
4コマ漫画『小さな恋のものがたり』は、60年以上にわたる記録的ロングセラーだ。83歳になった作者は今、先に旅立った家族を思い出しながら、ひとり暮らしを楽しんでいる。「ごくささいなことも『生きていてよかったー』となるのですから、年をとるのはなかなか面白くもあるんですよね」と、日常を綴るなか、「新しいことにチャレンジしつづけていきたい」と新たな作品への意欲ものぞかせる。※本稿は、みつはしちかこ氏『こんにちは!ひとり暮らし』(興陽館)の一部を抜粋・編集したものです。 【この記事の画像を見る】 ● 毎日ささいなことを楽しめる 80代のひとり暮らし 人はいつから老人になるのかしら?シワが増える、毛が抜ける、目がかすむ、耳が遠くなる……、ヒエー、みんなで年とりゃこわくない? わたしの整体の先生は、「死ぬまで働こう」と言ってます。元気で長生きしているおばあちゃんが言うには、その秘訣はどうやら働くことらしいです。 わたしのように、大好きなマンガを一生の仕事にできるのは、ほんとに運がよくありがたいことなんだな、とこのごろつくづく思います。 しかし、なんでしょう?人は突然老人になるのでしょうか?人は急に人間から老人になってしまう。あれっ!?すると、わたしもいつの間にか老人になっているらしい。他人ごとではない。 ほら、ひとつのカサに2人じゃなくて、4人も入れてあちらからやってきましたよ、傘寿さん。わたしもあれよという間に80代の仲間入り。 あっという間ですよ。わたしが80代なんて、他人ごとのよう。でも顔に頭に手に足に、すべてのところに少しずつはっきりと老いのしるしが現れています。ギョギョ!ですから、出かけるときはきれいに見える鏡にニッコリしたり。 時に落ち込んで、早く逝きたいなと思うこともありますが、まあ図太く、ひとり暮らしを楽しみつつ、おいしいお汁粉なぞ作ったりして、ひとりで「ウマッ!」と言ったりして。 キラキラの姿にひかれて、値段は高かったけど、思い切って買った太刀魚の塩焼き。焼き立てに箸を入れたらぼくっと白い身が噴き出てきて、とてもおいしかったー、生きていてよかったー、旬の太刀魚を食べて旬のわたしになったかも。 こんなふうに、ごくささいなことも「生きていてよかったー」となるのですから、年をとるのはなかなか面白くもあるんですよね。 締め切りが迫っているというのに、あちこちに手紙を書いたり、道草をしたりしているわたし。 ――しかし、80代のわたしが17歳の高校生を描いているなんて、われながら驚く一方、当たり前のような気もします。ま、チッチ(編集部注/4コマ漫画『小さな恋のものがたり』の主人公の少女)が追いかけてくるのか、わたしが追っかけをしているのか、これもまたよくわからなくなりました。 そこで一句。 寿命といふわからぬものと日向ぼこ