群雄割拠のエコカーエンジン「石油編」 130年の歴史と技術革新、ハイブリッドで生き残り
■ディーゼルエンジン
長所:CO2排出量が比較的少ない、 短所:わずかにコスト高、NOxとPMがガソリンエンジンより多い 代表的な車種はマツダ・デミオ。 ガソリンよりCO2排出量で有利なエンジンとして現在再びクローズアップされているのがディーゼルエンジン。 従来は、ガソリンエンジンより値段が高く、重量が重く、音がうるさく、排気ガスにNOx(窒素酸化物)とPM(粒子状物質)が多いのが問題だったが、ディーゼルも現在急速に技術が進み、だいぶ欠点を克服した。そのため元々持っている燃費のよさとトルクの大きさを活かした魅力的なエンジンとして注目を集めている。ディーゼルエンジンの技術に関する詳細は7月6日の記事「『排ガス対策・静か・高回転』 常識を覆したマツダのディーゼル」を参照のこと。 価格は同クラスのガソリン車に比べると割高だが、それでもEVやPHVほどではなく、現実的な選択肢として大きな期待を集めている。
■HCCI
長所:内燃機関としては非常に優れた燃費 短所:技術的な未成熟 代表的な車種以前に、製品として未発売。 最も期待されている次世代エンジンである。簡単に言うとガソリンエンジンをディーゼルと同じ方法で着火させる仕組みだ。 気体は圧縮すると温度が上がる物理特性がある。ディーゼルではこの特性を利用して高温に圧縮した空気の中に燃料を霧状に噴霧して燃やしている。HCCIではこれをガソリンでやろうとしている。ただし、HCCIの場合は空気ではなく予め燃料が混じった混合気。それが圧縮による温度上昇で発火する。ということは起きていることはノッキングだ。 ガソリンエンジンにとってノッキングは本来事故のようなもの。普通ならエンジンが壊れてしまう。しかし逆説的に言えば、壊れるほどの力が出るということでもある。例えるなら自然の猛威をエネルギー源として用いようという冒険的技術である。 点火プラグで圧縮混合気の端っこに火をつけ、燃え広がらせるのではなく、圧縮による温度上昇で混合気全体が同時に急速かつ完全に燃えるので、薄い混合気でも着火できる上、NOxやPMが出にくい。薄くて燃やせるなら、使う燃料が少ないのでCO2排出量も少ない。 本当は、ガソリンと空気には理論空燃費という比率があって、重量比で14.7:1にしないとなかなか理想的に燃えないのだが、HCCIではその常識にとらわれ無くていい。ガソリンエンジンのところで書いたストイキ直噴を成立させるために、とことん正確に理論空燃費制御をしているのが馬鹿馬鹿しいくらいに自由だ。にもかかわらず前述のように力が出る。HCCIの2.5リッターのエンジンでガソリン1リッターのエンジンに力でも燃費でも勝てると豪語するメーカーも広島の方にある。 しかしHCCIは「事故の様な」燃焼なので、制御できる範囲が狭く、制御を超えて暴走すれば本当にエンジンが壊れ、下回れば発火しない。条件によっては普通のガソリンエンジンに戻り、点火プラグで火をつけなくてはならない。そしてその切り替え領域では一気にPMが増える問題がなかなか解決できないことが課題だ。