群雄割拠のエコカーエンジン「石油編」 130年の歴史と技術革新、ハイブリッドで生き残り
◎小排気量ターボとレスシリンダー ガソリンエンジンの技術は、つまるところ燃料の持つエネルギーをいかに効率良く動力に変えるということに尽きる。そういう意味では、小排気量ターボや気筒数削減の狙いは熱損失の低減にある。爆発時の熱を外に逃がさず、効率よく動力に変換することだ。折角効率の良い爆発を起こしても、燃焼ガスが保温されずに冷やされれば圧力が下がってしまう。そこで、ピストンやシリンダーを小さくして燃焼ガスとの接触面積を減らすのだ。冷暖房の時にカーテンを閉めるのと同じ理屈だ。 小排気量ターボなら接触面積を減らし、過給することで排気量が小さくなった分の力が補える。エンジンのパーツが小さくなり、軽くなるのもメリットだ。つまり、小さいエンジンだから熱を逃がさないで、効率良く多くのパワーを取り出せるのだ。 もうひとつ、シリンダーの数を減らす、つまりレスシリンダーには接触面積の低減以外にも気筒あたり排気量の最適化という意味がある。エンジンの燃焼を理想的にするには1気筒あたりの排気量は450ccあたりがベストだと言われている。4気筒は3気筒より回転バランスに優れていて振動が少ないのだが、1.3リッターや1.5リッターで4気筒にすると1シリンダーあたりの排気量が小さくなり過ぎて燃焼効率が悪い。 燃焼こそが最も基礎的な課題であることはここまで述べて来た通りである。もちろんピストンなどの動的部品が4セットから3セットになり、部品が減ることで摩擦箇所が減り、同時に軽量化にも効果があるのは言うまでも無い。 最近のクルマは、すでにメーカー発表値でリッターあたり30キロ以上に到達しているものがいくつもある。実はこの20年、世界的な指標としては「3リッターカー」、つまり3リッターの燃料で100キロを走破することが課題とされてきた。つまりリッターあたりに換算して33.3キロということだ。 8月25日に発表されたスズキの新型ワゴンRは、簡易型ハイブリッド機構のS-エネチャージを搭載し、3リッターカーまであと一歩のリッターあたり32.4キロまで詰め寄った。普通の人が普通に買うクルマがここまできたことは素晴らしい。しかし、残念ながらこうしたメーカー発表値は実際に路上を走って実現できる数値ではほぼない。 それでも実用燃費として、普通に走ってリッターあたり14キロあたりをマークするクルマはもはや珍しくなくなった。車種と走り方によっては20キロ以上走る場合もある。大事なのはエコスペシャルなクルマだけではなく、路上を普通に走っている何でも無いクルマの多くがエコになって行くことなのだ。ガソリンエンジンにはまだまだ多くの可能性が残されている。