廃墟が残した豊かな自然環境 滋賀・幽霊ビル 爆破解体、今は安心とやすらぎ 昭和100年 まちの今昔
62年に廃虚ビルと敷地を購入した業者は、爆破解体後、ヘリポートを備えた一大リゾート基地を建設すると説明していた。
ところが爆破後、がれきの撤去作業が途中でストップ。がれきは放置され、リゾート計画も立ち消えになった。
転機を迎えたのは平成13年7月。皮肉なことに、廃虚ビルの存在で長年、開発や人の出入りがなかったため、付近は自然湖岸の少ない南湖(琵琶湖大橋以南の琵琶湖)では生物多様性に富んだ貴重な地区だと評価された。滋賀県が土地の一部を購入、残りの跡地には大手化学メーカー、カネカの太陽光発電所を建てた。
現在、廃虚ビル跡地を含む一帯約4ヘクタールは「木の岡ビオトープ」となり、定期的に自然観察会が開催されている。今月8日にも水鳥の観察会が開かれ、地元住民ら30人が参加した。
同ビオトープの保全と利活用に取り組む団体「おにぐるみの学校」の小林圭介・滋賀県立大名誉教授は「結果的に『幽霊ビル』が貴重な自然環境を今に残したことになる」と感慨深げに話していた。(野瀬吉信)