花粉症の人は果物アレルギーのリスクあり!? アレルギーの最新事情(専門家が監修)
牛乳を飲んだ方が牛乳アレルギーに罹りにくい
新生児504人を生後1か月から3か月まで普通粉ミルク摂取群と除去群にランダムに分けて比較。6か月時の牛乳アレルギーの発生率を比べた。摂取群の方が発生率は低い。
環境が清潔になったからアレルギーが増えた?
近頃、子供でも大人でも、アレルギー疾患に悩む人は着実に増えている。理由の一つとして、アレルギーを招く3要因のうち、環境の変化が注目されている。衛生的になり小さい頃からアレルゲンと触れ合うチャンスが減り、アレルギーが増えたというのだ。これを「衛生仮説」と呼ぶ。 衛生仮説が最初に注目されたのは、90年代にスイスで報告された「牧場効果」。街と牧場で育った子供を比べると、ハイジのような牧場育ちの子供が喘息や花粉症になる率は、街育ちの半分から3分の1だったのだ。 アメリカの宗教集団アーミッシュとフッター派を比べた研究も興味深い。両者は東欧で農耕を営んだ祖先を持ち、遺伝的にはほぼ同一。大きな違いは、アーミッシュが19世紀の生活習慣を守り、子供の頃から牧場で動物を世話しているのに、フッター派はより近代的で衛生的に暮らしている点。両者を比べると前者の子供の喘息の発生率が低かったのだ。 衛生仮説を裏付けるのは、免疫細胞で発見されたToll様受容体。 「このセンサーが細菌やその成分を感知すると、アレルギーを抑える自然免疫を誘導しやすくなる。衛生的な環境ではこの仕組みが不発に終わり、アレルギーが起こりやすくなる可能性があります」(東海大学医学部の山田佳之教授) 最近、B細胞やT細胞のような獲得免疫に関わるリンパ球以外にも、自然免疫に関わる自然リンパ球があり、衛生状態に応じてアレルギー発症を左右するという新説も出てきた。衛生仮説はいまだ“仮説”のまま。詳しいメカニズム解明を待とう。
クラゲ+納豆、花粉+果物の合わせ技でアレルギーになる
長年元気にサーフィンを続けていた健康な大人が、突如として食物アレルギーを発症することがある。その謎を解くのが「交差反応」。交差反応とは、成分の作りがよく似ている複数のアレルゲンの合わせ技によって生じるもの。 冒頭の例では、サーファーは海で繰り返しクラゲに刺されており、クラゲのアレルゲンであるPGAにずっと晒され続けた結果、IgE抗体が生成されていた。そうと知らず普通に納豆を食べたところ、食物アレルギーの症状が発生。納豆のネバネバ成分にもPGAが含まれており、アレルゲンが侵入したと免疫が誤作動し、交差反応が発動したのだ。 交差反応でよりメジャーなのは、花粉―食物アレルギー症候群(PFAS)。花粉症の人が、花粉のアレルゲン成分と似た構造を持つ生の果物や野菜を食べたときに発症することが多い。 カバノキ科(シラカンバ、ハンノキ)の花粉と、バラ科(リンゴ、桃、サクランボ)の果物によるPFASがポピュラー。この他にも、キク科(ブタクサ)の花粉と、ウリ科(メロン、スイカ、ズッキーニ、キュウリ)、バショウ科(バナナ)の果物・野菜でもPFASが報告されている。大人の食物アレルギーの多くを占め、シラカンバ花粉症の約20%で見受けられるという。 「PFASの症状は口の粘膜の痒みやイガイガ感など口腔内に限定されることから、口腔アレルギー症候群(OAS)とも呼ばれます。生の果物や野菜のアレルゲンは消化プロセスで壊れるため、症状は口腔内に限られるのです」(あいち小児保健医療総合センターの伊藤浩明センター長) ジャムなど果物を加熱するとアレルゲンの作りが変わり、PFASは生じにくくなる。ただし、PFAS以外の子供の果物アレルギーは、果物を加熱しても起こるので要注意。 交差反応によるアレルギーには毛などネコのアレルゲンと豚肉による「ポーク・キャット症候群」、羽毛など小鳥のアレルゲンと鶏卵による「バード・エッグ症候群」がある。