実録「石丸現象」、“選挙のプロ”も舌を巻いた瞬間 選対事務局長も「まったく予期せぬ展開」だった
これ自体がすごく新しいことかというと、おそらくその予兆はあって、例えば2022年の参議院議員選挙でNHK党が議席を取ることなどは、皆さんあまり想定していなかったと思います。少なくともオールドメディアが積極的に報道した成果でないことは明らかなので、その頃からネットでの選挙活動の効果は少しずつ顕在化していたと考えられます。 青山:素地はあったということですね。石丸氏はその素地をとくにうまく生かせる、ネット選挙に適した人物だったということでしょうか。
藤川:そう思います。誰がやっても成功するものではないのかなと。先の総選挙でいえば、同じようにネットを駆使してうまくいったのが国民民主党だった。自民党総裁選挙においては高市早苗氏だった。 自民党の党員層がYouTubeなんか見るのかなと、私は思っていました。だけど、オールドメディアの情報があまりに一方通行で、それだけではなかなか納得できないから、有権者が自分で情報を取りにいく時代になってきたんですね。60代、70代の人でもけっこうYouTubeを見ています。
選挙にネットを使ってもいいということになって、10年経ちました。この間で徐々に素地が築かれ、そこでうまく立ち回れる人が出てきたことが、今年の選挙結果につながったのかなと。 ■「政策語り」を明確に拒否した石丸氏 青山:石丸氏は選挙戦を通じて、政策を訴えることにあまり時間を割きませんでした。一方で斎藤氏は、これまでの実績を含め政策の話もたくさんしていました。この軸足の置き方の違いは、SNSの選挙戦にあまり大きな影響を及ぼさないのでしょうか?
鳥海:どちらを重視するかは、タイミングなどによっても変わってくると思います。ただいずれにせよ、ネットの場合はナラティブ(物語性)をうまく作っていくことは重要だと思います。 難しい政策論がわからない人にも、物語であればすっと入ってきやすい。物語性という点でいえば、石丸氏も斎藤氏も、本人や応援する人たちがうまい作り手だったといえるでしょう。 青山:藤川さんは石丸氏の選挙戦で、ナラティブを作ることを意識されたのでしょうか?