実録「石丸現象」、“選挙のプロ”も舌を巻いた瞬間 選対事務局長も「まったく予期せぬ展開」だった
それで各所と相談しながら決断したのが、YouTubeに力を入れようということでした。そこからYouTuberの人たちがどんどん寄ってくることになるのですが、10日間くらい経ってからもう一度石丸氏の知名度調査をしてみると、15%から60%程度まで上がったんですよ。この拡散力は何なんだ、と驚きました。 その時点でやっとオールドメディアが注目し始めた。だから「石丸現象」というのは、オールドメディアとニューメディアがうまくハイブリッドして成功した例だと思います。一方の斎藤元彦氏の兵庫県知事選は逆で、新旧が対立し、ニューメディアだけであそこまで行った例なのかなと。
青山:いずれにしろ、石丸氏の選挙戦は最初からあのようなムーブメントを起こそうとしたものではなかったわけですね。私も政治記者として長く取材してきた中で、ネットでの発信は一部のコアな層には刺さるものの、全体にはさほど大きな影響を与えないというイメージを持っていました。 藤川:それがもう、すごい爆発力で。彼が相談に来てから選挙戦がスタートするまで12~13日くらいしかなかったのですが、とりあえずXなどでボランティア募集をかけてみたら、3日間で2000人集まりました。こんなに集まることはいまだかつて経験がなかった。
そのほとんどは、これまで選挙戦を経験したことのない人でした。かつ、石丸氏とは会ったことがない、だけどYouTubeで見て居ても立ってもいられなくなった、という人たちで。われわれが普段、なんとかお願いして動員しているボランティアとは全然違って、すごい行動力でやってくれるんですね。これは小さな奇跡だなと思いました。 ■2022年からあった「予兆」 青山:SNSの専門家である鳥海さんから見て、この石丸現象は予期せぬものだったのか、それとも、ある程度起きうるだろうと解釈できるものだったのか、いかがでしょう?
鳥海不二夫(以下、鳥海):藤川さんのおっしゃるとおり、ネットで人気を博しても実際の選挙に大きな影響がない、というのはこれまで散々いわれてきましたし、データでも出ていることでした。その意味で、今回の結果が驚きであったことは間違いないです。 一方で、都知事選の結果について3番手以降まで見ていくと、オールドメディアがほとんど取り扱わなかったけどSNSをうまく活用していた安野貴博氏が5位に入っていたりします。石丸現象に限らず、ネットの戦略は一定の効果を上げるようになってきたといえると思います。