なぜ阪神は“史上最悪”7点差を逆転されたのか…矢野監督の采配ミスと「カーブが通用しない」ケラーの“守護神失格”
本来であれば、ケラーと岩崎の配置転換を早急に行うべきだろうが、その岩崎の調子も上がってこない。昨季終盤の疲労の蓄積を指摘する声もある。つまり、現状たったの1試合の失敗でケラーを配置転換するだけの代役がいないという苦しい事情もある。 関西スポーツ紙の代表取材による報道によると矢野監督は「オレの責任として受け止めている。仕方がないではすまされない」と語ったという。矢野監督も1試合での配置転換は考えていないが、高代氏は、「問題はケラーの精神面。切り替えることができるのか。引きずってしまうのかによっても今後の起用法は変わってくるだろう」との懸念を持つ。 スアレスの穴をどう埋めるかという今季の阪神の弱点が開幕戦から表沙汰になってしまったのだ。 そして、この敗戦の痛手は、そのクローザー問題だけではない。 7回6安打7奪三振3四死球3失点の好投を見せた代役開幕の藤浪に白星がつかなかったことも大きなマイナスポイントである。 高代氏が指摘する。 「藤浪のピッチングには粘りがあった。これまでとの大きな違いは、ストレートで見逃しの三振も、空振りの三振も取れたこと。“サインに首をふったらカットかスライダ―”というパターンではなくなり、自信を持ってカウント球、勝負球にできるボールが増えていた。それだけに勝ちをつけさせてあげたかった。昨季、納得のいく勝ち星を重ねていない投手(3勝3敗)だけにひとつの勝ち星が自信となり余裕にもつながる。その意味で、この逆転負けにはただの1敗ではおさまらないショックがある」 藤浪は立ちあがりに一死二塁から山田に死球をぶつけ、サンタナのタイムリーで1点を失ったが、最少失点に食い止め、3回にも二死から山田、村上に連続四球を与えてピンチを作ったが、サンタナをアウトコースのストレートで見逃しの三振に打ち取り崩れなかった。新型コロナの陽性反応で開幕投手が白紙になった青柳の代役を十分に勤め上げたのではあるが、肝心の白星がスルリと逃げていった。 チームの収穫はまだあった。 新4番の佐藤がオープン戦から見せていた“昨季との違い”が本物であることを証明し、5番・糸原、6番・糸井の並びが機能したのである。 佐藤は3安打1打点、糸原が2安打2打点、糸井が2ランを含む3安打4打点。3人で8点中7点を叩き出したこととなる。 「佐藤はすべて軽打でつないだ。4回に左中間を破った二塁打もバットを出しただけ。フルスイングというよりもミートを意識した状況に応じたバッティングができているし、オープン戦から取り組んできたコンパクトな打撃が実を結び、軸に重心が残りすぎることもなく体重移動もスムーズになってきた。おそらく矢野監督は、その佐藤のスタイルの変化を見て、5番に長打はないが、安定感のある糸原を置いたのだろう。糸原も見事に期待に応えた。糸井も今年がダメなら終わるくらいの決意をもって痛い痒いを言わず。キャンプ、オープン戦と調子を上げてきたが、その勢いのままに結果を出した。大山の不振が心配だが、4、5、6番が連動することで打線の得点力が増した。大きな収穫だろう」 きょうのヤクルトの先発は日本シリーズで存在感を示した左腕の高橋。開幕戦から爆発した4、5、6番の左3枚の真価を問われるゲームになりそうである。