モスフードサービスの「モスライスバーガー」はあの和食をヒントにつくられていた
あのロングセラー商品はどのようにして生まれ、どのようにヒットをつづけてきたのか。その道のりをたどる「ロングセラー物語」。今回は、発売から37年となる、モスフードサービスの「モスライスバーガー」にスポットを当てる。現在のブランド担当者が商品の歴史と今を語る。 〔撮影:西崎進也〕 永野志津夫さん ながの・しずお/'65年、神奈川県生まれ。高校卒業後、調理の仕事を経て、'91年にモスフードサービス入社。店舗スタッフ、店長を経験後、商品開発部に。'23年より、商品開発グループ参事。
日本独自の調理方法がヒントになった
日本では'80年代中頃に米余りの時代がありました。そこで政府から外食チェーンなどに、お米を使った商品を導入してほしいという要請があったんです。 当初はバンズにお米を挟むという発想で考えたそうなんですが、炭水化物同士ですし、しっくりこなかった。 そんな中、ヒントになったのが、天ぷらをおにぎりにした天むすでした。なるほど、お米をパンで挟むのではなく、お米で何かご飯に合うものを挟めばいいのではないか、と思いついたんですね。 ただ、炊いたお米を成型しようとすると、これが難しかった。挟むお米をライスプレートと呼んでいますが、成型で圧力をかけ過ぎると粒感がなくなってしまって、お米っぽくない。一方で圧力をかけないとまとまりきらずにボロボロ崩れてしまう。 ここでヒントになったのが、焼きおにぎりでした。醤油や味噌を塗って軽く焼く。そうするとお米のでんぷんが硬化して表面が焼き固められる。これなら、お米の粒感もあって、食感もよく、崩れるのも防ぐことができる。 当初はライスプレートに醤油を塗っていましたが、今は噴霧しています。醤油がないと、オーブンで焼いたときに表面がカサカサになってしまうんです。水気をつけ、かつ味もいい感じになり、絶妙の食感にもなる。 開発するのに2年ほどかかりましたが、日本独自の調理方法がヒントになったんです。 モスライスバーガーに使われているお米は、比較的でんぷん質が強いお米です。どんなお米が合うのか、何十種類と試したそうです。 コシヒカリ系が多いですが、今はお米屋さんにお願いして、適切なお米を納入いただいています。銘柄単品の場合もありますし、ブレンドされていることもある。必要なお米の特性は知っていただいていますから、プロにお任せしています。 最初の具材は鶏つくねでした。モスバーガーには日本人に合う、日本人好みの食べ物を、という考え方がベースにあります。 つくねならご飯に合いますし、挟みやすいし食べやすい。日本人みんな好きだよね、ということで決まったようです。 ただ、ライスバーガーは世の中になかった商品。どんなものなのか見るまでわからない。食べる人が増えるにつれ、口コミで人気が広がっていったと聞きました。結果、予想を超える大反響になり、社員が工場に製造の手伝いに行ったという逸話も残っています。