【驚き】スカイツリー展望台の時間は地上より10億分の4秒速い! 時空のゆがみ測れる時計
■東京スカイツリーと地上では時間の流れが違う?
香取教授たちは、2020年、光格子時計をスカイツリーの地上階と地上450メートルの展望台にそれぞれ設置し、2台の時間の進み方を比較した。 すると、地上の時計の方が展望台の時計よりもゆっくり進んでいるという結果が確認できたという。 高さが低い=地球に近い方が重力がより強いため時間がゆっくり流れるという一般相対性理論が改めて実証された。
研究室には先月発表されたばかりの最新型の小型の光格子時計も設置されていた。 サイズは旅行鞄3つ分ほどまでに小型化されていた。
香取教授は光格子時計の研究をこのように振り返る。 「光格子時計が大きかったときには、アインシュタインの相対論の世界というのは、SFの世界で、リアルな世界で見えるなんて想像できなかった。今回小型化に成功した光格子時計だと、持ち上げるだけで、時間が早く進むというのがリアルに見えてくる。ダリの有名な重力で時空間が曲がってるという絵が、これで見ることが出来る」 現在国内のメーカーと協力し小型化した光格子時計の量産化に取り組んでいるという。 将来的には、日本各地に配備することで、微小な地殻変動がリアルタイムで監視し防災に役立てることなどが期待されている。
■香取先生の研究への姿勢
香取教授はかつてドイツに渡って当時、次世代原子時計の最有力候補と考えられていた技術の研究をしていた。一つの粒子の振動数を100万回も繰り返して測ることで正確に時間を測定しようとするものだがこれでは測定に大変な時間がかかる。 その後日本に帰国した際それまでの研究路線を大胆に変更し大量の原子を光格子の中に捉えて一気にその振動数を測定しようというだれもやっていなかったアイデアに向けて研究に入る。それが光格子時計の実現につながっている。 だれもやっていない研究。聞こえは良いが成功するとは限らない。乗り出すことは怖くなかったのか。 香取教授「初めて聞く話って、どんな偉い先生も何言っているかわからないという、そういった最初の反応がむしろ楽しかった」「そのくらい理解されてないからこそ、自分でやるモチベーションがあると思った」 記者「理論としあっても出来るかどうかわからないとか思わなかった?」 香取教授「それが面白い(笑)だけど、そこにチャレンジするのが科学の面白さだと思う。決まったレールがあって、そこをみんなが突っ走っているから自分でそこのレールに乗っかる必要はない、新しいレールを作ることこそ、大事なことだろうとずっと思っていました。やり方っていくらでもある、どのやり方が成功するかってそれがよくわからない、そこに挑戦して新しい道を作り出すっていうのに価値があると思う」
今や光格子時計は小型化され人が運べるサイズになった。いずれは富士山山頂に運び上げて現在国土地理院が採用している測定方法とどちらが正確に標高を測定出来るか競いたいのだとうれしそうに話してくれた。 時空のゆがみの中、人それぞれ異なる時間を生きている事を示す光格子時計と、その開発者の生き方はどこか似ているように思えた。 間もなく新たな年を迎える。私も私にしかない時間を過ごしていきたいと思った。